糖尿病の初期症状5選〜幹細胞治療という新しい可能性〜
はじめに
糖尿病は「万病のもと」とも呼ばれる病気です。発症すると全身の血管や神経、臓器に深刻なダメージを与える可能性があり、放置すれば失明や腎不全、心筋梗塞、脳梗塞など命に関わる病気にまで発展します。
日本ではすでに1,000万人以上が糖尿病と診断され、予備群も含めれば2,000万人を超えると推定されています。つまり、成人の5~6人に1人が糖尿病あるいはそのリスクを抱えている計算になります。
怖いのは、糖尿病が初期には自覚症状に乏しく、気づいた時には合併症が進行してしまっているケースが多いことです。そこで今回は、糖尿病の5つの初期症状を詳しく解説し、最後に膵臓そのものを回復させる可能性がある新しい治療法 「自己脂肪由来幹細胞治療 」についてご紹介します。
1 糖尿病とは
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が慢性的に高い状態になる病気で、大きく分けて2つのタイプがあります。
1-1 「1型糖尿病」
1型糖尿病は、自己免疫反応によって膵臓のインスリンを作り出すβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる病気です。若年層に多く、急激に発症することが特徴です。
1-2 「2型糖尿病」
食べすぎや運動不足、肥満などの生活習慣や遺伝的要因が重なって起こるもので、日本人の糖尿病の約9割を占めています。2型では、インスリンの分泌が不十分になったり、インスリンが出ていても効きにくくなったりすることで血糖値が上昇します。
いずれのタイプでも、血糖値が高い状態が続くと、血管の壁に糖が結合し「糖化最終産物(AGEs)」を作り出し、活性酸素を発生させて血管内皮を傷つけます。特に細い血管がダメージを受けやすく、眼・腎臓・神経といった場所から合併症が進行します。糖尿病が「万病のもと」と言われるのはこのためです。
2 糖尿病の初期症状 5つ
2-1 多飲・多尿(異常な喉の渇き)
血糖値が高いと、腎臓は余分な糖を尿に排泄しようと働きます。その際、大量の水分が一緒に失われるため、尿量が増え、体は強い渇きを感じます。
「水を飲んでも飲んでも喉が渇く」「夜間に何度もトイレに行く」といった変化は、糖尿病の典型的なサインです。季節や運動量に関わらず水分摂取量や排尿回数が急に増えた場合は要注意です。
2-2 視力低下・かすみ目
目の奥にある網膜には細い血管が張り巡らされています。高血糖によってこれらの血管が詰まったり破れたりすると「糖尿病網膜症」を引き起こし、視力が低下します。
初期には「かすむ」「メガネが急に合わなくなった」「視野の一部が欠ける」といった症状から始まります。糖尿病網膜症は進行すれば失明に繋がってしまうため、早期発見が極めて重要です。
2-3 感染症にかかりやすい
糖尿病は免疫機能を低下させ、感染症にかかりやすくなってしまいます。風邪や肺炎が長引いたり、皮膚の傷が化膿しやすくなったりするのが典型的です。
特に当クリニックの専門でもある泌尿器科の領域では、男性の陰部に感染症が起きやすく、それが糖尿病発見のきっかけになることも多くあります。近年の研究でも、糖尿病患者は肺炎や尿路感染症のリスクが健常者の2~3倍になると報告されています。
2-4 体重減少(食べているのに痩せる)
インスリンがうまく働かなくなると、食べ物から入ってきた糖が体の細胞に取り込まれず、血液中に余ってしまいます。本来なら糖がエネルギー源になるはずなのに、それが使えないため、体は「エネルギー不足」と勘違いしてしまうのです。その結果、筋肉や脂肪を分解して無理やりエネルギーを作ろうとします。
そのため、しっかり食べているのにどんどん体重が減っていく、という一見矛盾した現象が起こります。これは体が悲鳴を上げているサインのひとつで、糖尿病の重要な初期症状です。
2-5 手足のしびれ(糖尿病性神経障害)
高血糖により細い血管が傷つくと、神経への血流が低下し、神経障害が起こります。手足のしびれや感覚の鈍化が特徴で、片側ではなく左右同時に出ることが多いのも特徴です。
「両足のつま先がじんじんする」「手の指先の感覚が鈍い」といった症状が続く場合、糖尿病性神経障害の可能性があります。進行すると歩行障害や潰瘍、壊疽にもつながります。
3 自己脂肪由来幹細胞治療の可能性
近年、糖尿病に対する新しい治療として注目されているのが「自己脂肪由来幹細胞治療」です。幹細胞には、下記のような特徴があります。
① 自らを増やす「自己複製能」
②さまざまな細胞に変化できる「多分化能」
③ 損傷部位に集まる「ホーミング効果」
④ 成長因子やサイトカインを分泌して周囲を修復する「パラクリン作用」
自分の皮下脂肪から幹細胞を取り出して培養し、静脈から点滴投与することで、膵臓のβ細胞を保護・修復し、炎症を抑え、インスリン分泌や効き目を改善する可能性が期待されており、エビデンスが蓄積されつつあります。
◆ 海外臨床研究では、2型糖尿病患者に幹細胞を3回投与し、HbA1cが9.6%から7.3%に改善(6か月後)。
◆ 国内でも、HbA1cが10%から6.4%に改善した症例が報告されています。
自己脂肪由来幹細胞治療は、これまでの食事療法・運動療法・薬物療法といった保険診療だけでは限界を迎えてしまった方や、将来的にインスリン注射に進むのを避けたい方にとって、新しい選択肢となり得ます。また、「薬に頼るだけでなく根本的に改善を目指したい」「合併症が進行する前に膵臓の機能を回復させたい」という方にとっても、前向きに検討できる治療です。
4 新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでの取り組み
当院(新橋消化器内科・泌尿器科クリニック)でも、厚生労働省の認可を受けた自己脂肪由来幹細胞治療を実施しています。保険診療で培った確かな技術と経験で、脂肪採取から実際の投与までおこなわせていただきます。
一般的に、自己脂肪由来幹細胞治療の価格は300~400万円という医療機関が多いようです。当院は保険診療もおこなっているクリニックであり、ラグジュアリーな個室空間や専属のコンシェルジュなどの対応が難しいため、価格を抑えて提供させていただいております。
また、幹細胞の培養や加工については、株式会社バイオセラピー研究所および株式会社医道メディカルの細胞培養加工施設と契約しております。いずれもGMP(Good Manufacturing Practice)に準拠した環境で、安全性と品質を厳しく管理されています。
幹細胞治療のお問い合わせ・ご予約専用電話番号 |
5 まとめ
糖尿病は初期症状を見逃すと、気づいたときには合併症が進行していることも少なくありません。喉の渇きや体重減少、手足のしびれなどの小さなサインを早めに察知し、医療機関を受診することが重要です。
さらに、近年は自己脂肪由来幹細胞治療といった新しいアプローチも登場し、膵臓そのものの回復を目指せる可能性が見えてきました。従来の治療と併せて、こうした最先端医療にも目を向けることが、糖尿病克服への大きな一歩になるでしょう。

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の外来診察を行なう。
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。
再生医療専門クリニックも運営