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過活動膀胱(尿が我慢できない)の症状・原因・検査・治療について

1.過活動膀胱とは

過活動膀胱と聞いてどのような症状を想像するでしょうか。過活動膀胱は急に尿意を感じ、トイレに行きたくなる症状を言います。過活動膀胱の症状を持つことで、日常生活にも影響を及ぼし、生活の質(QOL)が下がってしまいます。

 

過活動膀胱を抱える患者様は、40歳以上の8人に1人いると言われており、男女比は6:4で男性の方が多いです。そして日本には1000万人以上の患者様がいると言われています。この記事を読んでいただくことで、過活動膀胱についての理解の助けになったり、症状に悩んでいる方が泌尿器科を受診するきっかけになればと思います。

2.過活動膀胱の症状とは

過活動膀胱の症状は、

① 尿意切迫感(おしっこに行きたい感じがものすごく強くなる)

夜間の頻尿(何度もトイレに行く)

③ 昼間の頻尿

④ 切迫性尿失禁(トイレに間に合わずに漏れてしまう)

が主な症状となっています。過活動膀胱だからといって、①〜④すべての症状が揃うわけではありません。過活動膀胱の症状として必ず存在するのは、①の尿意切迫感です。尿意切迫感があることが過活動膀胱という診断につながる1つのポイントになります。
一般的な過活動膀胱の患者様は、尿意切迫感と頻尿の両方の症状を持っており、さらにその症状がひどくなってきた場合は切迫性尿失禁が出てくるというのが一般的です。

3.過活動膀胱の原因とは

過活動膀胱の原因は様々です。原因は男女によっても違いますし、実はその症状が過活動膀胱ではない場合もあり、詳しく検査をすると大きな病気が隠れていたという場合もあるのです。

3-1前立腺肥大症

前立腺肥大症は、男性の加齢に伴って50歳以降から多くなる病気です。前立腺が大きくなることで、尿が出にくい、頻尿、尿意切迫感、尿閉(尿が出なくなる)などの症状が出てきます。

 

ですので、前立腺肥大症があると過活動膀胱の症状も出てきます。前立腺肥大症の治療は、基本的には内服薬(α1ブロッカー、タダラフィルなど)の治療となります。もし、内服薬での治療で十分な効果がない場合は、経尿道的(尿道からカメラをいれる)に前立腺を切除(TUR-P)したり、経尿道的に前立腺をレーザーで摘出する手術(HoLEP)などをします。

 

手術による出血リスクや年齢などを考慮し、手術を選択せずに、後述するボツリヌス毒素(ボトックス)の膀胱壁内注入療法も行うこともあります。この治療により、排尿機能の改善や前立腺の大きさの縮小が期待できます。前立腺肥大症の詳細のページはこちらをご覧ください。

3-2加齢

男性は、前立腺肥大症によって過活動膀胱の症状が生じてきますが、女性の場合は特に原因はなく、加齢によって起こってきます。早い方だと20代から、一般的には40代から生じてきます。加齢によって膀胱が過敏となり、膀胱に少ししか尿が溜まっていなくてもすぐに排尿したくなる状態が出てきます。

 

経過としてはまず頻尿がありその後尿意切迫感が出てきます。
女性の過活動膀胱の治療は、後述する骨盤底筋体操や内服薬です。それでもコントロールが難しい場合は、ボツリヌス毒素(ボトックス)の膀胱壁内注入療法もあります。

4.過活動膀胱のような症状が出る疾患

男性は前立腺肥大症によって、女性は加齢によって過活動膀胱の症状を生じる事が多いですが、自分の症状は過活動膀胱だと自己判断で決めてしまうのは非常に危険です。

過活動膀胱の症状が出る怖い病気が隠れている場合がありますので、それらを除外してからでないと診断になりません。
これから述べる怖い病気を除外するために、さらに詳しい検査(超音波検査やCT検査など)が必要です。

4-1尿管結石症

尿管結石症は、結石により左右いずれかの腰や脇腹に強い痛みが生じる病気です。尿管結石が膀胱の近くまで落ちてくると膀胱が刺激を受けて、過活動膀胱のような頻尿や尿意切迫感を生じることがあります。

尿管結石がある場合は、大きさにもよりますが、まずは水分摂取により自然に尿道から結石が出るような治療の方法を取ります。それでも結石が体外に出ない場合には、経尿道的(尿道からカメラを入れる)に結石を摘出したり、体外衝撃波により体の外から結石を砕く治療を行ったりします。

4-2膀胱がん

膀胱がんの初期症状は、無症候性肉眼的血尿です。これは何も症状(痛みや頻尿)がないけれど、血尿が出るという状態です。
膀胱がんが進行してくると、大きくなった腫瘍が膀胱を刺激するので、頻尿や尿意切迫感が出てきます。膀胱がんは膀胱鏡検査(膀胱からカメラを入れて尿道から膀胱までを観察する検査)で確定診断となります。

早期の膀胱がんの治療は、尿道から内視鏡を入れて治療する経尿道的内視鏡的切除術をします。一方で膀胱がんが進行してしまうと、お腹を開いて膀胱を全て取り出す膀胱全摘術をする必要があります。

4-3膀胱炎などの尿路感染症

尿路感染症でも、膀胱刺激症状が起きるので、過活動膀胱のような頻尿、残尿感、尿意切迫感を生じることがあります。女性では膀胱炎、男性では前立腺炎が尿路感染症の原因となり、前立腺炎には発熱を伴います。

基本的には抗生剤の投与で治りますが、繰り返す場合には、その原因となる疾患(例えば、前立腺肥大症膀胱結石など)が隠れていないか検査をすることが大切です。

4-4前立腺がん

前立腺がんは基本的には無症状で、癌がかなり進行してこないと症状が現れません。前立腺がんが進行すると、膀胱を刺激し、過活動膀胱のような尿意切迫感や頻尿などの症状が出てきます。

前立腺がんは、男性がかかる最も多い癌です。治療は、

①注射と内服薬で男性ホルモンを抑える治療

②ロボット支援下前立腺全摘除術

③放射線による治療

などがあります。

5.過活動膀胱の検査について

5-1尿検査

泌尿器科では尿検査はとても大切な検査です。
尿の中に白血球や赤血球が混じっていないか、ばい菌や癌細胞がいないかなどをチェックします。

とても簡単にできる検査なので、診断の第一段階として尿検査をすることがとても重要となります。過活動膀胱では、基本的に尿検査に異常は出てきません。

5-2採血検査

採血検査は、身体の中の炎症の項目(白血球やCRP)、腎臓の機能の項目、前立腺がんマーカー(PSA)などをチェックします。

5-3超音波検査

超音波検査は、身体に害がなく泌尿器系の臓器を簡単に観察する事ができるため、とても有用な検査となります。超音波検査では、前立腺の大きさ・尿管結石の有無・膀胱結石の有無・膀胱がんの有無などを確認し診断につなげます。

5-4CT検査

CT検査は多少の放射線被曝がありますが、得られる情報がとても多いため、非常に有用な検査となっています。尿管結石を疑った場合は、このCT検査を行うことによって結石の大きさや場所がはっきりと分かります。

 

また、C T検査は尿管結石だけではなく、身体の中の1㎜程度のとても小さな病変も見つける事ができます。さらに検査の際に造影剤を使用することにより腫瘍などの病変もさらに分かりやすくなるため、診断の大きな助けとなります。

5-5排尿日誌

排尿日誌は、その方の排尿の状態を把握するのにとても大切な検査となります。排尿日誌では24時間を通して1回ごとの尿量、摂取した水分量を測ります。例えば、1回の尿量が50 ml程度の少量であれば、膀胱が過敏になっているため、過活動膀胱の症状と考えます。

一方で頻尿があっても、1回に出る尿量が300 ml〜400 ml以上としっかり溜まっている場合には、飲水量が多いことによって尿量が多くなっているとみなし、過活動膀胱とは診断しません。自分が過活動膀胱かもしれないと疑っている方は、ご自身でメモリのついたカップを購入して、1回ごとの尿量を測定してみるのも一つの方法です。カップはドラッグストアなどで簡単に購入できます。

6.過活動膀胱の治療

6-1骨盤底筋体操

骨盤底筋体操は、膣尿道肛門の括約筋の筋肉を締める体操です。膣や肛門の筋肉を動かすことで、コントロールしにくい尿道の筋肉も鍛えることができます。骨盤底筋体操をすることで、過活動膀胱の症状が改善することがあります。骨盤底筋体操の方法は当院でもお伝えしています。

6-2膀胱訓練

膀胱訓練は、排尿したいと思ったタイミングから5分〜10分ほど我慢をすることで、膀胱に溜められる尿の容量を増やす訓練です。

我慢をしすぎると尿路感染症になってしまうため、5分〜10分が適切です。膀胱訓練によって過活動膀胱の症状がある程度緩和できる場合があります。

6-3内服治療

過活動膀胱の基本的な治療は内服薬になります。抗コリン薬(トビエース・ベシケア)、β3作動薬(ベタニス)などが一般的です。内服薬で治療がうまくいかない場合は、後述するボツリヌス毒素(ボトックス)の治療に移ることもあります。
また、男性で前立腺肥大症を伴う場合は、前立腺肥大症に準じた治療を行います。

6-4膀胱内ボツリヌス毒素(ボトックス)注入

 

内服薬や骨盤底筋体操などで効果がない場合は、ボツリヌス毒素(ボトックス)の膀胱壁内注入療法を行います。こちらは保険適応となっております。ボツリヌス毒素は神経や筋肉を麻痺させる作用がありますので、過敏になっている膀胱の筋肉の神経を麻痺させることで過活動膀胱を改善します。

尿道よりカメラを挿入し、カメラを見ながらボツリヌス毒素を膀胱壁内に均等に20カ所注入します。治療は10分ほどで終了するため、外来での治療が可能です。当院でもボツリヌス毒素(ボトックス)の膀胱壁内注入療法を行っております。詳しくは当院医師スタッフまでお尋ねください。

7.過活動膀胱を放置すると

過活動膀胱を放置すると、生活の質(QOL)が下がり、外出を躊躇してしまったり、仕事に集中できなくなったりすることがあります。また、ご本人は過活動膀胱だと思い込んでいても、実は尿管結石膀胱がん、尿路感染症、神経疾患など怖い病気が隠れていることもありますので放置することはとても危険です。

もしも過活動膀胱以外の病気が見つかった場合、初期だと内服治療で治る場合もありますが、症状が進んでしまうと手術が必要となる場合もあるのです。

8.過活動膀胱かなと思ったら

 

先述の通り、過活動膀胱の症状を自己判断で放置することは、生活の質(QOL)を下げたり、重い病気を見逃す点でもあまり良いことではありません。適切な検査や診断ができる泌尿器科にかかりましょう。


新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、過活動膀胱に対する適切な診断、検査、治療が可能です。
過活動膀胱の症状でお困りの方はお気軽にご受診、ご相談ください。

9.診療費用

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
CT検査 5000円前後
尿流量動態検査 1500円
膀胱鏡検査 3000円
胃カメラ 4000円前後
大腸カメラ 5000円前後

※3割負担の場合

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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