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脂質異常症の症状・原因・⾷事・検査・治療について

脂質異常症は、⾎液中のコレステロールや中性脂肪が基準値から外れてしまう病気です。

⾷の欧⽶化などに伴い、⽇本における脂質異常症の患者様の数は増加傾向にあり、⽇本⼈の 4 ⼈に 1 ⼈ が脂質異常症と⾔われています。

脂質異常症は糖尿病高血圧と同様に放置すれば動脈硬化を進⾏させ、⼼筋梗塞や脳梗塞などを引き起こし、命を脅かす原因となりますので正しい治療を⾏うことが⼤切です。

この記事では脂質異常症について詳しくお話ししますので、参考にしていただければ幸いです。

1 .脂質異常症

脂質異常症は無症状のことが多く、健康診断等で指摘されることがほとんどです。しかし、⾃覚症状がないために医療機関を受診せずに放置する⽅が多いのが現状です。

脂質異常症を放置すると、⾎管の内側にコレステロールの蓄積(プラーク)が形成され、⼼筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患を引き起こし、最悪の場合死に⾄ることもあります。

そのた め、脂質異常症を指摘されたら、早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが⼤切となります。 

1-1 脂質異常症のタイプ

脂質は、私たちの体の重要なエネルギー源であり、細胞膜や脳神経組織、ホルモンの材料になる という役割を持っています。しかし、⾎液中の脂質の量が基準値から外れると、下記のような脂質異常症と診断されます。

1-1-1 ⾼ LDL コレステロール⾎症

LDL コレステロールが基準値よりも⾼いタイプです。LDL コレステロールは、「悪⽟コレステロ ール」とも呼ばれ、増えすぎると⾎管の内側に溜まり、動脈硬化を進⾏させてしまいます。

1-1-2 境界域⾼ LDL コレステロール⾎症

基準値未満ですが、境界域に該当し、⾼⾎圧や糖尿病などの疾患があると動脈硬化のリスクが⾼ くなります。

1-1-3 低 HDL コレステロール⾎症

HDL コレステロールという脂質の値が基準よりも低いタイプです。

HDL コレステロールは、「善⽟コレステロール」とも呼ばれ、余ったコレステロールを回収し、 肝臓に戻す働きがあり、⾎管に蓄積したコレステロールを減らします。

HLD コレステロールの量 が基準値以下になると余ったコレステロールを回収できなくなり、動脈硬化を進⾏させてしまうため、HDL コレステロールは基準値以下にならないよう増やす必要があります。喫煙がHDLコレステロールを低下させる主な要因です。

1-1-4 ⾼トリグリセライド(中性脂肪)⾎症

トリグリセライドが基準値よりも⾼いタイプです。

中性脂肪は、⾝体を動かすエネルギー源として使われますが、摂りすぎると肥満の原因になり、体脂肪が増えます。⾎液中の中性脂肪の量が増えると「⾎液ドロドロ」の状態となり、動脈硬化の原因となります。

1-1-5 ⾼ Non-HDL コレステロール⾎症

Non-HDL コレステロールが基準値よりも⾼いタイプです。Non-HDL コレステロールは、総コレ ステロール値から HDL コレステロール値を引いた数値で善⽟コレステロール以外のコレステロー ルと捉えることができ、基準値を超えると、動脈硬化のリスクも⾼くなります。

1-1-6 境界域⾼ Non-HDL コレステロール⾎症

基準値未満ですが、境界域に該当し、⾼⾎圧や糖尿病などの疾患があると動脈硬化のリスクが⾼ くなります。

1-2 脂質異常症の診断基準

脂質異常症の診断基準となるのは、LDL コレステロール、HDL コレステロール、トリグリセライド、non- HDL コレステロールの4つの値です。それぞれの基準値は下記の表の通りです。

2022 年 7 ⽉に改定された診断基準では、⾮空腹時のトリグリセライド値が加わり、175 ㎎/dl 以 上になると脂質異常症と診断されることになりました。

なぜ、⾮空腹時のトリグリセライドが加 わったかというと、空腹時だけではなく、⾮空腹時のトリグリセライド値が⾼くなると、⼼筋梗 塞や脳梗塞などの発症リスクが⾼まることが分かってきたからです。

⼀般的に⾎液検査は空腹時 に⾏いますが、脂質異常症の診断においては、⾮空腹時の⾎液検査が重要です。

2.脂質異常症の症状

2-1 動脈硬化

脂質異常症は『サイレントキラー』とも呼ばれ、無症状のうちに動脈硬化を引き起こします。

脂質異常症を放置すると⾎管の内側の壁にコレステロール(プラーク)が付着し、⾎管壁が厚く、 硬くなっていきます。

また、⾎液もドロドロとして流れが悪くなり、動脈硬化が進んでいきます。

2-2 動脈硬化が招く疾患

動脈硬化が進むと、さらに深刻な状態を引き起こします。

⾎管の壁の内側に付着したコレステロ ールがプラークと呼ばれるコブを形成する事で⾎液の流れが悪くなり、⾎管が詰まってしまうことがあります。

また、プラークが剥がれ、⾎管を詰まらせてしまうと⼼筋梗塞や脳梗塞を引き起 こします。

3.脂質異常症の原因

脂質異常症の原因の多くは糖尿病高血圧同様に⽣活習慣にありますが、特定の疾患や遺伝的要因によって引き起こさ れるケースもあります。

3-1 続発性(⼆次性)脂質異常症

他の疾患や薬の副作⽤などが原因で⽣じる脂質代謝異常を続発性脂質異常症と⾔います。

3-1-1 脂質異常症の原因となる疾患

糖尿病・甲状腺機能低下症・クッシング症候群・先端巨⼤症・褐⾊細胞腫、肥満などの内分泌疾 患、ネフローゼ症候群・慢性腎不全などの腎疾患、閉塞性⻩疸・原発性胆汁性肝硬変・原発性肝がんなどの肝疾患があります。

特定の疾患が原因の脂質異常症では、原因となる疾患の治療が優先されます。

3-1-2 脂質異常症の原因となる薬

利尿薬、B 遮断薬、ステロイド、エストロゲン、プロゲステロン、⾮定型抗精神病菜、HIV 治療 薬(プロテアーゼ阻害薬)、免疫抑制薬、レチノイドなどの使⽤は脂質異常症の原因となります。

3-2 家族性⾼コレステロール⾎症

脂質異常症の中でも『家族性⾼コレステロール⾎症』は特定の遺伝⼦が原因であり、両親のどち らかが原因となる遺伝⼦を持っていると発症することが分かっており、指定難病となっています。

家族性⾼コレステロール⾎症は、⾎液中の LDL コレステロール(悪⽟コレステロール)が異 常に増えてしまう病気で、300⼈に1⼈ほどの有病率であると⾔われます。

特に⼼臓の⾎管 (冠動脈)に影響が⼤きく、⼼筋梗塞や狭⼼症を引き起こすリスクが⾼い傾向にあります。

4.脂質異常症の検査

4-1 採⾎検査

脂質異常症の診断では、採⾎検査を⾏い、中性脂肪や HDL-コレステロール、LDL-コレステロー ル、総コレステロールなどを測定します。

Non-HDL コレステロールは、総コレステロール値か ら HDL コレステロール値を引いた数値です。いずれかの数値が基準値より外れていた場合に脂質 異常症と診断します。

4-2超⾳波検査

超⾳波検査は放射線を使わない安全で簡単な検査で迅速に⾏うことができます。当院でも超音波検査を行っております。

4-2-1 頚動脈エコー検査

頚動脈エコー検査では、脳の⾎管に続く頚動脈にプラークが無いか、⾎管が狭くなっている箇所 がないかを調べます。

もし、プラークがあれば、脳卒中のリスクが⾼くなるため、早めの治療が 必要です。

4-2-2 ⼼エコー検査

⼼エコー検査では、脂質異常症が原因の動脈硬化により、弁の働きが悪くなっていないか、狭⼼ 症や⼼筋梗塞がないかなどを観察します。

4-2-3 腹部エコー検査

脂質異常症では、肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝を合併しているケースがあるためエコー検査で調べ ます。

5.脂質異常症の治療

脂質異常症の治療の⽬的は、動脈硬化を抑え、合併症である脳卒中、⼼筋梗塞、腎不全などを予 防することがポイントとなります。

検査によって脂質異常症の詳しい状態を調べ、症状に応じて 患者様の希望を伺いながら治療を⾏なっていきます。

5-1 ⽣活習慣の改善

5-1-1 ⾷事療法

⾷事療法では、下記の表にある積極的に摂取すべき⾷品と避けるべき⾷品を参考にカロリーの過 剰摂取に注意してください。

5-1-2 禁煙

タバコに含まれるニコチンは、トリグリセライド、LDL コレステロールを増加させ、さらに HDL コレステロールを⼤きく減少させることが分かっていますので禁煙が必要です。

5-1-3 アルコールは適量を

アルコールは、肝臓内での中性脂肪の合成を増加させるため、適量を⼼がけてください。

5-1-4 運動療法

有酸素運動は、⾎液中の過剰な脂質を減らし、かつ HDL コレステロールを増やすことが分かって います。ウォーキング、速歩、⽔泳などを 1 ⽇の合計で 30 分以上、毎⽇、または少なくとも週 3 ⽇は実施することが推奨されています。

5-2 薬物療法

⽣活習慣の改善、⾷事療法、運動療法を⾏なっても改善されない場合には、薬物療法を検討しま す。但し、薬物療法と並⾏して⾷事療法、運動療法を続けることが重要です。

質異常症の治療薬にはいくつかのタイプがあり、症状に適した治療薬を使⽤します。

5-2-1 HMG-CoA 還元酵素阻害薬

HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン系)は、⾼ LDL コレステロール⾎症に対する第⼀選択薬 であり、肝臓でのコレステロール合成を抑制し効果を発揮します。

5-2-2 ⼩腸コレステロールトランスポーター阻害薬

⼩腸コレステロールトランスポーター阻害薬は、⼩腸においてコレステロールの吸収を抑制し、 ⾎中コレステロール濃度を低下させます。特に⾼ LDL コレステロール⾎症の治療に使⽤されます。

5-2-3 フィブラート系薬

フィブラート系薬は、コレステロール及びトリグリセライドの合成を抑制する作⽤や胆汁へのコ レステロール排出を促進する作⽤があり、特に⾼トリグリセライド⾎症に効果的です。

5-2-4 n-3 系多価不飽和脂肪酸

イコサペント酸エチル(エパデール)、オメガ-3 脂肪酸エチル(ロトリガ)など、⿂の油を原料 とした EPA を含む製剤で、脂質合成を抑える作⽤を持ち、⾼トリグリセライド⾎症の治療に使⽤ されます。

5-2-5 陰イオン交換樹脂

コレステロールは胆汁酸に変えられて腸に排泄され、また再吸収されます。 陰イオン交換樹脂は消化管内で胆汁酸を吸着し、そのまま体外へ排泄させてコレステロールを下げます。

5-2-6 ニコチン酸誘導体

肝臓での中性脂肪の合成を抑制し、LDL コレステロール値を低下させ、さらにHDL コレステロ ールを増やす作⽤をもちます。

5-2-7 プロブコール

コレステロールの胆汁への排泄を促進させる作⽤と、肝臓でのコレステロール合成を抑制する作 ⽤があります。

5-2-8 PCSK9 阻害薬

PCSK9 阻害薬は、LDL コレステロールの肝細胞への取り込みを促進させ、⾎液中の LDL コレス テロールを減らします。

6 診療費⽤

当院は全て保険診療です。

初診の診療費⽤は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3 割負担の場合)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
CT検査 5000円前後
尿流量動態検査 1500円
膀胱鏡検査 3000円
胃カメラ 4000円前後
大腸カメラ 5000円前後

※3割負担の場合

新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは患者様全員を番号でお呼びし、待合室にパーテーションを設け、プライバシーに配慮し た診療を⾏っております。経験豊かな専⾨医が患者様ひとりひとりに寄り添う診察を⼼がけてお ります。健診で脂質異常症を指摘された⽅や脂質異常症が⼼配な⽅は、是⾮当院医師、スタッフ までお気軽にご相談ください。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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