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前立腺がんの症状・原因(リスク)・検査・治療について

前立腺がんと聞いて、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。「男性しかならない病気」「年々増えてきている病気」「PSAという腫瘍マーカーがある」「健診のオプションで前立腺がん検査がある」など様々だと思います。
こちらでは、前立腺がんの最新のガイドラインを参考にして、前立腺がんの正しい知識をお伝えしていきたいと思います。

1.そもそも前立腺とは

そもそも、前立腺とは図のように尿道の一部を形成する臓器で、精液の一部である前立腺液を作る臓器です。前立腺の役割は、精液の一部を作ることのみです。それなのに前立腺肥大症や前立腺がんなど、重大な病気を発症する可能性を秘めているため、非常に厄介な臓器であると言えますね。

2.前立腺がん、近年の罹患率と死亡率

前立腺がんは、日本人男性で1位の罹患数(かかっている方の数)の癌です。近年、ますますその罹患数は増え続けています。一方で、死亡数は日本人男性で7位となっており、かかっている方の数に比べて、死亡数が少ないのが現状です。前立腺がんと診断された中で、死亡に至るのは10人に1人ほどになります。つまり男性で前立腺がんを発症する方は多いけれど、「死に至る事はそこまで多くない」という癌なのです。

3.なぜ前立腺がんが増えているか(前立腺がんの原因・リスク)

3-1高齢化

前立腺がんにかかる方は加齢と共に急速に増えてきます。皆さんもご存知の通り、日本は今、高齢化社会ですので、前立腺がんにかかる方の数も、高齢者の増加とともに増えてきています。高齢化は前立腺がんのリスク・原因となります。

3-2食の欧米化

前立腺がんは、欧米ではずいぶん昔から罹患率が1位でした。日本人の食が欧米化するとともに、前立腺がんにかかりやすくなっているとも言われています。欧米化も前立腺がんのリスク・原因となります。

3-3PSA検診の普及

前立腺がん検診として、血液検査で分かる「PSA検診」が普及しています。PSAとは前立腺がんの腫瘍マーカーです。現在、企業や市区町村などでも積極的に前立腺がん検診への取り組みが行われており、その受診者も増えています。その結果、症状が出ない、とても早い段階の前立腺がんを発見する事ができるようになってきています。

4.前立腺がんの症状とは

4-1早期前立腺がんの症状

早期の前立腺がんには症状はほとんどありません。
図のように、前立腺がんは前立腺の外側から発生するため、初期には尿道を圧迫しません。癌細胞の量が少ないと、全身に与える影響もなく痛みなども出てこないため、初期の前立腺がんの自覚症状はほとんどありません。ですので、前立腺がんの早期発見のためにはPSA検診が不可欠です。

4-2進行した前立腺がんの症状

4-2-1尿の症状

前立腺がんが進行すると、腫瘍が尿道を圧迫するくらいに大きくなってきます。そうすると、尿の勢いが悪くなったり、頻尿(尿の回数が多くなる)が起こってくることがあります。さらに進行すると尿閉(尿が全く出ない状態)になることもあります。

4-2-2腰痛

前立腺がんは、骨に転移する傾向があり、進行すると腰の骨や骨盤の骨に転移してしまいます。
骨転移をすると、腰痛が出てくることがあります。

4-2-3食欲不振

前立腺がんが進行すると、癌細胞の量が増え、全身に悪影響を及ぼします。癌細胞が血液中に出す物質によって、食欲不振・体調不良・倦怠感の原因になります。

5.前立腺がんの検査について

5-1尿検査

前立腺がんの初期では、尿検査に異常はみられません。ですが、前立腺がんが進行すると、尿の中に赤血球や白血球が出てくることがあります。尿検査は簡単にできる検査でありながら、得られる情報も多いため、泌尿器科ではとても有用な検査となってきます。

5-2採血検査

前立腺がんを調べる上で1番大切な検査はPSA検査です。PSA検査は血液検査で分かる前立腺がんの腫瘍マーカーです。一般的にはPSAが4.0ng/ml以上で「PSAが高い」と考えますが、必ずしも数字だけではなく、その方の年齢や前立腺の体積など総合的にみて判断します。というのもPSAは年齢と共に上昇する傾向にあるため、慎重に判断する必要があります。
また、炎症反応(白血球・CRP)や腎臓の機能なども血液検査でチェックし、全身状態の把握をしていきます。

5-3超音波検査

超音波検査は体に害のない、非常に有用な検査です。お腹の上から機械をあて、臓器からはね返ってくる超音波を画像として映し出します。これにより、疑わしい病変を見つけることができます。明らかな前立腺がんは超音波検査でも分かるのですが、癌が小さいと見つからない場合もあるので、その場合にはPSAの値や前立腺の大きさなどを見て、総合的に判断します。

前立腺の大きさも超音波検査で分かりますし、前立腺の周囲の臓器に異常がないかも超音波で調べることができます。

5-4MRI検査

PSA検査や超音波検査で、前立腺がんを疑ったら、MRI検査を行います。MRI検査は磁石と電磁波を使って体の中を解析する検査です。MRIは骨盤内の臓器(前立腺・子宮・卵巣)に非常に優位とされています。

MRIだけで前立腺がんかどうかの診断をすることはありませんが、この後述べる前立腺生検検査が必要かどうかを判断する材料となります。MRIはX線を使わないため、放射線被曝の心配がありません。

5-5CT検査

CT検査は、前立腺がんの確定診断には使いませんが、前立腺がんによる転移がないかなどの診断に使われます。全身をミリメートル単位で輪切りにすることができるため、転移などの異常がないか全身を調べるために使われることがあります。
CTは、多少の放射線被曝はありますが、多くの情報を得ることができるため、非常に有用な検査です。当院でもCT検査は行っております。

5-6前立腺生検検査

MRIやPSA検査で、前立腺がんを疑った場合、前立腺の生検検査を行います。生検とは前立腺に直接針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で詳しく観察することを言います。その中に癌細胞がいるかを観察することで、前立腺がんの最終的な診断となります。

肛門から機械を挿入して生検する方法(経直腸生検)と、睾丸と肛門の間から針を刺して生検する方法(経会陰生検)の2種類の方法があります。どちらの方法でも出血や感染のリスクがあるため入院が必要となる場合が多いです。

6.前立腺がんの治療について

6-1ホルモン療法

前立腺がんは男性ホルモンによって進行します。ですので、男性ホルモンを抑えることで、前立腺がんの進行が抑制されます。大半の前立腺がんがホルモン療法で抑えられますが、悪性度の高い前立腺がんは、ホルモン療法で抑えられない場合があります。
ホルモン療法には飲み薬と注射がありますが、少なからず副作用もあるため、患者様に合った治療を慎重に選択していく必要があります。

6-2手術治療

手術は、①開腹手術②腹腔鏡下手術③ロボット支援下腹腔鏡手術があります。
今、手術の主流は③のロボット支援下腹腔鏡手術です。傷が小さく、合併症や出血量が少ないため、回復も早いという利点があり、大学病院や総合病院などではロボット手術を取り入れているところが多くなってきています。


手術の合併症には、勃起不全・尿漏れ・鼠径ヘルニア(脱腸)などがあり、患者様の生活面にも影響を及ぼす可能性もあるため、どの治療を選択するかは主治医と十分に話し合う必要があります。
当院の患者様が手術が必要な前立腺がんではと判断した場合には、前立腺生検検査を含め、適切な病院をご紹介させていただいておりますのでご安心ください。

6-3放射線治療

放射線治療は、放射線を照射して前立腺の癌細胞を死滅させる治療です。
年齢的な懸念により手術ができない患者様に対しても治療が可能と言われています。


放射線治療も、機械や技術の進化に伴って、より前立腺に限局して(周囲の臓器には放射線を当てずに)放射線を当てられるようになってきており、合併症も少なくなってきています。
合併症には、皮膚障害、勃起障害、頻尿、直腸出血などで、前立腺の周囲の臓器に放射線が当たることで合併症が起こります。

6-4化学療法

進行した前立腺がんには、化学療法を行う場合があります。ホルモン療法と併用して行われることがほとんどです。化学療法は点滴から癌を殺すお薬を入れます。そのため正常な細胞も攻撃してしまい、副作用として倦怠感、吐き気、脱毛、便秘、下痢、感染症などを起こす恐れがあります。

6-5 PSA監視療法

PSA監視療法は、早期の前立腺がんの方に限定して行われます。積極的に治療する訳ではなく、前立腺がんが進行していないかを3ヶ月に一度PSA検査で確認していきます。

PSAの値が上昇しなければ、前立腺がんが進行していないと判断し、手術やホルモン療法などの治療は行いません。PSAが上昇した場合には前立腺がんが進行していると判断し、前に述べたような手術やホルモン療法や放射線治療などに移行していきます。

7.前立腺がんの患者様の経過の例

7-1 「62歳男性の例」

住んでいる自治体の前立腺がん検診でPSA4.2となったため、泌尿器科を受診。採血、超音波検査、MRI検査で前立腺がんの疑いとなったため、大学病院で前立腺生検検査を行った。

その結果、早期の前立腺がんと診断され、PSA監視療法を行っているが、8年経っても前立腺がんの進行(PSA値の上昇)を認めない

7-2 「74歳男性の例」

頻尿症状(尿の回数が多い)があり、泌尿器科を受診。超音波検査で前立腺肥大症を認め、採血でPSA5.6と高い数値が出た。MRIで前立腺がんを疑ったため、前立腺生検検査をし、前立腺がんの診断。

早期の前立腺がんであったが、本人の希望がありロボット支援腹腔鏡下手術を行った。手術後5年経過しているが、再発や転移を認めていない。

8.前立腺がんを放置するとどうなるか

前立腺がんの進行はゆっくりと言われています。ですが、放置することで前立腺がんが進行し、やがて頻尿の症状が出てきたり、尿が出なくなったりします。症状が進み、癌が骨に転移すると腰痛の症状が出てくることもあり、日常生活にも影響を及ぼしてしまいます。それでも放置してしまうと最悪の場合は死に至ることもあります。

 

9.PSA高値を指摘、前立腺がんを疑う症状があったら

PSAが高いと健康診断で指摘された方、尿の勢いが悪い方、尿の回数が多い方は必ずお近くの泌尿器科を受診しましょう。また、50歳以上で前立腺がん検診を受けたことがない方は、自治体などの前立腺がん検診を積極的に受けましょう。前立腺がんは早期の状態で発見することができます。そして早期に適切な治療をすれば今まで通りの日常生活を送れることができる場合が多いのです。

新橋消化器内科・泌尿器科では、前立腺がんを疑う症状がある方に適切な検査、診断を行っております。
どんなことでもお気軽に当院医師、スタッフまでご相談ください。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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