過敏性腸症候群の症状・原因・検査・治療について
過敏性腸症候群という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
過敏性腸症候群の患者数は非常に多く、日本人人口の約10%と言われています。
数か月以上続くお腹の痛みや張り、ガス、下痢、便秘などの症状をきたす病気です。命に関わる病気ではありませんが、症状がひどくなると日常生活に支障をきたすことが多いにあります。
また、過敏性腸症候群は大腸がんや潰瘍性大腸炎などの重症な病気とも症状が似ているため、過敏性腸症候群を疑った場合はそれらの病気を否定するため大腸内視鏡検査を行うことがとても大切になります。
この記事では過敏性腸症候群の症状、原因、検査、治療法について解説しますので参考にしていただければ幸いです。
1 そもそも腸とは何をするところか
腸は管状の臓器で、大きく小腸と大腸に分けられ、口から始まり食道、胃、十二指腸、小腸、大腸と続いていきます。
長さは個人差があり、小腸で6~7メートル、大腸で1~2メートル程度とされています。
主な機能は、小腸は胃や十二指腸から送られてきた消化物を更に分解し、栄養を吸収することです。
一方で大腸は小腸から送られてきた消化物の水分を吸収し、便を形成する働きをしています。
2 過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群は、小腸や大腸に炎症や腫瘍など検査で分かる異常がないにも関わらず、数か月以上続くお腹の痛みや張り、ガス、下痢、便秘などの症状をきたす病気です。
排便症状によって、便秘型、下痢型、混合型、分類不能型に分けられます。
命に関わる病気ではありませんが、症状によっては日常生活に支障をきたすことが少なくないです。
3 過敏性腸症候群の現状
過敏性腸症候群の患者数は、日本・世界ともに人口の約10%と言われています。
女性に多く、加齢により患者数は減っていくことが分かっています。
近年の患者数は横ばいで推移しています。
4 過敏性腸症候群の原因・リスク
過敏性腸症候群の原因は、ストレスや過度の緊張、腸炎などの感染症後、腸内細菌の乱れ、一部の高カロリー食・高脂肪食、遺伝などが考えられています。
一つの原因だけではなく複合的に原因・リスクが重なり合って過敏性腸症候群の症状が生じてきます。
5 過敏性腸症候群の症状について
過敏性腸症候群の症状は、主なものとして数か月以上続くお腹の痛みや張り、ガス、下痢、便秘などがあります。
先述したタイプにより症状の出方が異なります。
5.1 便秘型
便秘型は、腸が緊張状態になったときに腸の動きが弱くなり、便秘となります。
便はウサギの糞のようなコロコロしたものになります。
排便時に強くいきまないと便が出ず、便が残ったような感じがあります。
5.2 下痢型
下痢型は、急激なお腹の痛みの後に激しい水のような便が出て症状が改善します。
1日に何度もこの症状が起こります。
5.3 混合型
便秘と下痢が数日ごとに繰り返し起こります。
よくある症状として、3~4日ほど続く便秘の後に硬い便が出て、その後1日に何度も下痢をすることがあります。
5.4 分類不能型
上記のものに当てはまらないものとされています。
6 過敏性腸症候群の検査について
過敏性腸症候群は血液検査や下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡検査)で異常がないにも関わらず症状が出るのが特徴ですが、まずは検査により潰瘍性大腸炎や大腸がんなどの他の大きな病気がないことを確認することが大切です。
6.1 血液検査
血液検査では、炎症反応や甲状腺疾患、糖尿病などの数値に異常がないか確認します。
大腸がんや潰瘍性大腸炎では炎症の数値が上がることがあります。
6.2 便検査
便検査では、感染していないか(便培養検査)や血液が混ざっていないか(便潜血検査)を調べます。
6.3 大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査では、大腸に感染性腸炎や炎症性腸疾患などの炎症や、大腸がんなどの腫瘍がないかを確認します。
また見た目には正常でも、生検による組織検査をすることで細かな炎症の程度を調べることができる場合があります。当院では苦しまない眠ったままの大腸カメラ(大腸内視鏡検査)が可能です。詳しくは当院医師・スタッフまでお尋ねください。
7 過敏性腸症候群の治療について
7.1 生活習慣の改善
まずは暴飲暴食を控え、規則正しい食事を摂ることが大切です。
刺激物、高カロリー食、高脂肪食、アルコールを控えましょう。
さらにストレスをため込まず、睡眠や休養を十分とることで生活習慣の改善を図ることが大切です。
7.2 内服治療
生活習慣の改善でもよくならない場合には薬による治療が行われます。
消化管調整薬という腸の蠕動運動を整える薬や整腸剤、高分子重合体という腸の中の水分を吸収し便の水分バランスを整える薬が用いられます。
症状により、便秘型には便秘薬や腸の働きをよくする薬、下痢型には下痢止めの薬、うつ症状や不安が強い場合には抗うつ薬や抗不安薬、腹痛が強い場合には痛み止めや漢方薬を使う場合もあります。
症状に応じて消化器科の専門医がお薬を調整いたします。詳しくは当院医師までお尋ねください。
8 過敏性腸症候群の予防について
残念ながら過敏性腸症候群の予防法についてははっきりしたものは分かっていません。
暴飲暴食や刺激物、高カロリー食、高脂肪食、アルコールを控え、ストレスをため込まず、睡眠や休養を十分とることが予防に役立つ可能性があります。
9 過敏性腸症候群を放置すると
過敏性腸症候群は、命に関わる病気ではありませんが、症状がひどくなると電車に乗れなかったり、仕事に集中できなくなったりするなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
10 過敏性腸症候群の患者様の経過の例
10.1 22歳男性
元々幼少期からテストや試合の前など緊張する場面でお腹の痛みや下痢症状が出やすかった。
大学卒業後に就職し、慣れない環境でストレスが溜まっていた。
3か月ほど前から出勤する電車で度々腹痛に襲われ頻回の下痢を起こすようになったため、当院を受診された。血液検査、大腸内視鏡検査では異常所見を認めなかった。
大腸内視鏡検査の画像
症状から下痢型の過敏性腸症候群と診断した。
なるべくストレスを溜め込まないよう生活習慣の改善を指導し、消化管調整薬、下痢止め、痛み止めの薬を処方した。
2週間後頃から症状の改善がみられるようになった。
10.2 43歳女性
元々便秘気味で、症状のひどい時には市販の便秘薬を使っていた。
最近になり、4~5日排便がないことが多くなり、便も硬く少ししか出なくなったため、当院を受診された。
血液検査、大腸内視鏡検査では異常所見を認めなかったため、便秘型の過敏性腸症候群と診断した。
野菜や海藻類、キノコ類などの食物線維を多く含んだ食品や乳酸菌、水分を多く摂るよう指導し、消化管調整薬、便秘薬を処方した。
現在はまだ便秘気味で数日排便がないことがあるが、以前と比較して便秘に悩まされることが少なくなり、便性状も正常の便となることが多くなった。
11 過敏性腸症候群の症状かなと思ったら
数か月以上続くお腹の痛みや張り、ガス、下痢、便秘などに気づかれた方は、必ず一度消化器内科を受診しましょう。
新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、過敏性腸症候群の適切な検査、診断が行えます。
当院では苦しまない眠ったままの大腸内視鏡検査が可能です。
治療が必要な場合は適切な病院へご紹介いたします。
詳しくは当院医師・スタッフまでお気軽にお尋ねください。
12 診療費用
当院は全て保険診療です。初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
尿流量動態検査 | 1500円 |
膀胱鏡検査 | 3000円 |
胃カメラ | 4000円前後 |
大腸カメラ | 5000円前後 |
※3割負担の場合

名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。