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膀胱がんの症状・原因(リスク)・検査・治療について

膀胱がんと聞いてどのようなことを想像するでしょうか。「芸能人が公表した癌」「血尿が出る」「おなかから尿を出すことになる」など様々だと思われます。この記事では、膀胱がんについて最新のガイドラインを参考にして皆様に分かりやすく解説していきたいと思います。
膀胱がんについての皆様の理解の助けになると幸いです。

1.そもそも膀胱とは何をするところか

膀胱は図のように腎臓から出た尿管が左右につながっており、足側の中央から尿道が出ています。膀胱は尿をためるところであり、尿を体の外に出すところです。まれに膀胱が尿を作り出すと思っている方もいらっしゃいますが、尿を作り出すのは腎臓であり、膀胱ではありません。

2.膀胱がんの罹患率

膀胱がんにかかる患者様の数は、年々増加傾向にあります。2020年時点での統計では男性で10,000人に1人、女性で40,000人に1人の割合でかかるという数値が出ています。そしてその割合は男性の方が高く、女性の4倍となっています。

3.膀胱がんの原因・リスク

膀胱がんの原因、リスクとして、加齢、喫煙、アルコール、遺伝、化学物質への暴露(化学物質を扱うお仕事の方)が挙げられます。
男性の方が、喫煙や飲酒の習慣を持つ方が多いため、膀胱がんになる方の割合も女性より男性の方が多くなっていると考えられます。

4.膀胱がんの症状について

4-1血尿

膀胱がんの初期症状として、「無症候性の肉眼的血尿」が挙げられます。これは何も自覚症状(腹痛頻尿)がないけれど、血尿が出るという状態です。


「無症候性の肉眼的血尿」の症状は、膀胱がんの初期症状としてもっとも有名です。この状態で泌尿器科を受診して、しっかりと検査と診断をすることが大切です。そうすれば、おなかを開ける大きな手術をせずに、早期の膀胱がんとして治療できる可能性が高いのです。

4-2頻尿(尿の回数が多い)、排尿時痛(尿をする時に痛みが出る)

膀胱がんが進行してくると、膀胱刺激症状が出てきます。膀胱刺激症状には、頻尿(尿の回数が多い)、排尿時痛(尿をする時に痛みが出る)、残尿感(尿をしてもまだ膀胱に尿が残っている感じがする)などがあります。
膀胱刺激症状が出てくると、膀胱がんがある程度進行した状態になってきていると考えられます。

4-3腹痛

膀胱がんがさらに進行すると、膀胱の外にまで癌細胞が浸潤し、腹膜(お腹の臓器を覆う膜)にまで到達してしまいます。そうすると腹痛の症状が出てきます。膀胱がんで腹痛が出る状態にまでなると、膀胱だけを摘出する手術をしても根本的な治療にならない場合もあるので、手術ができなくなる可能性があります。

また、腹痛は膀胱がんだけでなく、他の怖い病気が隠れている可能性も多くあります。腹痛で困っている方は近くのCTや超音波検査が出来るクリニックを受診しましょう。

4-4食欲不振、倦怠感

膀胱がんが進行することで、癌細胞が増えます。癌細胞が増えると、倦怠感を引き起こすような物質が癌細胞から血液中に漏れ出てきます。癌が進行するとともに、全身の倦怠感や食欲不振の症状が出てきます。膀胱がんだけではなく、倦怠感や食欲不振は大きな病気のサインになりますので、必ず近くのクリニックを受診しましょう。

5.膀胱がんの検査について

5-1尿検査

膀胱がんを疑った場合、尿検査で尿の中に赤血球が混じっていないか(血液が混じっていないか)、癌細胞が混じっていないかを確認します。癌細胞は、正常の細胞に比べてもろくて脆弱なので、癌からこぼれ落ち、尿中に認められる事が往々にしてあるのです。そのため、泌尿器科では尿検査は非常に大切な検査となっています。

5-2 採血検査

採血検査では全身状態に加えて、腎臓の機能、炎症反応(白血球やCRP)、前立腺がんマーカーPSAの確認などをします。


5-3超音波検査

超音波検査はおなかの上から機械をあてて、臓器からはね返ってくる超音波を画像として映し出す検査です。検査時の痛みもなく、体に害のない検査です。

この超音波検査で、膀胱の中に腫瘤(できもの)がないかを確認します。超音波検査で膀胱がんを疑った場合、CT検査や膀胱鏡検査を行います。

5-4 CT検査

CT検査では、膀胱がんがあるか、周囲の臓器にまで広がっていないか、リンパ節まで広がっていないか、腎臓が腫れていないか(水腎症がないか)などを数ミリ単位で確認することができます。

また、造影剤を使用する事でさらに詳しく状態の確認をすることができます。CT検査は多少の放射線被曝はありますが、得られる情報量が非常に多い、とても有用な検査となります。

 

5-5膀胱鏡検査

超音波検査やCT検査で膀胱がんを疑った場合、尿道からカメラを挿入して、直接膀胱内を観察します。直接カメラで観察するため、超音波検査やCT検査で分からないような膀胱の表面の小さな癌を見つけることができます。

 

検査時間もわずか2〜3分程度ですので、膀胱がんの確定診断には膀胱鏡検査は必要不可欠な検査となります。当院では身体にダメージの少ない柔らかいカメラを使用した軟性膀胱鏡検査を行っております。

6.膀胱がんの治療について

6-1早期の膀胱がんの治療

図のように膀胱がんは、一般的に膀胱の表面から発生していきます。膀胱がんが進行するとともに表面から筋肉のほうに浸潤し進行していきます。早期の膀胱がんの定義は、癌が粘膜内にとどまっており、筋肉に達していないものを指します。

 

早期の膀胱がんの治療は、尿道からカメラを入れて、電気メスで癌を切除する経尿道的内視鏡手術(TUR-Bt)をします。
これは開腹手術とは違い、内視鏡手術なので、身体への負担も少ない治療法です。入院が必要ですが、早ければ2〜3日で退院することができます。
早期の膀胱がんであれば、この治療で癌を取りきることができるため、早期発見、早期治療が非常に大切になります。

6-2進行した膀胱がんの治療

癌が進行して筋肉にまで達すると、膀胱を全て摘出する必要があります。膀胱を全て摘出するためには、おなかを切って手術をしなければなりません。手術時間も5時間以上かかるとても大掛かりな手術となり、患者様の身体への負担もあります。

そこで、今では腹腔鏡手術やロボット支援下手術が主流になってきています。
手術によって膀胱がなくなってしまうので、尿路変更術という手術も同時に行う必要があります。これは腎臓から作られた尿を排泄できるように今までとは違う経路を作ってあげる事です。
摘出した膀胱の代わりに小腸を切り取り、尿を溜めるための袋を作る場合もあります。この場合、訓練は必要ですが、手術前と変わらずに尿道から排尿することができます。

また、尿管(腎臓と膀胱をつないでいる管)をおなかの外に出し、そこに袋をつけて尿を出すという場合もあります。(ストーマ造設)
この文を読むだけでも大変な手術になる事は想像できるでしょう。入院期間も長期間に及びますし、手術後に排尿訓練をする必要もあるため、決して楽な経過ではありません。
何度も申しますように、膀胱がんは早期発見、早期治療がとても大切です。

7.膀胱がんを放置すると

早期の膀胱がんを放置すると進行した膀胱がんになってしまいます。進行した膀胱がんは、長時間の手術が必要な上、膀胱を失うため、おなかから尿を出す必要があるかもしれません。その場合、ストーマ管理が必要となり、日常生活にも大きな影響を及ぼす恐れがあります。

早期で発見できた場合には体に負担のかからない方法で治療ができますので、無症侯性の肉眼的血尿や気になる症状があったらできるだけ早く泌尿器科を受診するようにしましょう。

8.膀胱がんの患者様の経過の例

8-1 52歳男性

無症候性肉眼的血尿に気づき、泌尿器科受診。超音波検査、膀胱鏡検査にて、早期の膀胱がんと診断され、がんセンターを紹介された。経尿道的内視鏡手術(尿道よりカメラを入れて癌を切除する方法)で無事に手術が成功し、5年以上経過しても再発はない。

8-2 65歳男性

3年前から血尿があったが、病院を受診していなかった。腹痛や体調不良が出てきたため、総合病院を受診。CT検査にて進行性膀胱がん+肺転移と診断。膀胱全摘出手術と化学療法の治療方針となる。

9.膀胱がんの症状かなと思ったら

血尿・頻尿・排尿時痛などの症状に気づかれた方は、必ず泌尿器科を受診しましょう。発見が遅れると大掛かりな手術が必要となる場合があります。膀胱がんは早期発見と早期治療がとても大切です。

血尿、頻尿、排尿時痛に限らず、気になる症状がある方は泌尿器科を受診することをお勧めします。
新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、膀胱がんの適切な検査、診断をすることができます。
治療が必要となった場合には責任を持って適切な病院をご紹介させていただきますのでどうぞご安心ください。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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