メニュー

肝臓がん(肝細胞がん)の初期症状・原因・検査・治療

肝臓がんと聞いてどのようなことを想像するでしょうか。
肝臓がん(肝細胞がん)は肝臓の細胞が癌化してできる悪性腫瘍です。

原因の8割はB型肝炎やC型肝炎ウイルスと言われていますが、近年ではアルコールや肥満など生活習慣に関与するものが増えてきています。

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれており、癌がかなり進行してからでないと症状が出ないことが多く、注意が必要です。

この記事では肝臓の働きや肝臓がんの初期症状、原因、検査、治療法について解説しますので、参考にしていただければ幸いです。

1 そもそも肝臓とは何をするところか

肝臓は、お腹の右上の肋骨に収まっており、1.0~1.5kgの重さの大きな臓器です。
主に小腸で吸収された様々な物質の代謝や排泄、解毒、消化酵素の胆汁を合成するなど生命の維持に必要な働きをしています。

肝臓は再生能力に優れているため、異常が現れても症状が出づらく沈黙の臓器と呼ばれているため、異常に気づいたときには病気がかなり進行していることがあります。

2 肝臓がんとは

肝臓がんは、肝臓から発生した原発性肝がんと他の臓器の癌が肝臓に転移した転移性肝がんに分けられます。
更に原発性肝がんは、肝臓の細胞が癌化した肝細胞がんと肝臓の中の胆管が癌化した肝内胆管がんに分けられます。
一般的に肝臓がんというと肝細胞がんのことを指します。この記事では肝細胞がんについて詳しく説明します。

肝細胞がんは後述する原因によって肝細胞の炎症と再生が繰り返され、癌になると考えられています。
進行すると多くは肝臓内で再発しますが、リンパ節や肺、骨、脳にも転移することがあります。

3 肝臓がんの現状

肝臓がんは男性に多く、肝臓がんにかかる数は、国立がん研究センターがん情報サービスの統計によると、2019年時点で10万人あたり男性41.3人、女性18.5人で、男女ともに減少傾向です。

4 肝臓がんの原因・リスク

肝臓がんの原因の約8割はB型肝炎やC型肝炎ウイルスの持続感染によるものと言われています。
その他の原因としてアルコール性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などがあります。

NASHは肥満や糖尿病脂質異常症などのメタボリックシンドロームに関連してできた脂肪肝を背景とする肝炎のことで、近年増加傾向といわれています。

5 肝臓がんの症状について

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、炎症や癌があっても初期には自覚症状はほとんどなく、肝臓がんそのものの症状は、かなり進行してからでないと現れない場合が多いと言われています。

肝臓がんの患者さんは、ほとんどが慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患を伴っているため、症状としては慢性肝疾患によるものと肝臓がんによるものがあります。

慢性肝疾患によるものの症状は倦怠感やむくみ、腹水によるお腹の張り、黄疸があります。
肝細胞がんがかなり進行すると、お腹の圧迫感や腹痛などが出現することがあります。

6 肝臓がんの検査について

6.1 血液検査

肝臓がんの腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-Ⅱ、AFP-L3分画)の上昇がみられることがあります。
腫瘍マーカーは癌の勢いや進行度を反映すると言われていますが、進行した状態でないと上がらないことも多く、画像検査と組み合わせて診断します。

その他、黄疸などの数値や肝機能を調べます。

6.2 腹部超音波検査

体の表面から超音波をあて、癌の大きさや個数、血管との関係の他、肝臓の形や腹水について調べることができますが、癌の位置によってはうまく観察できない場合があります。

超音波検査は体に負担の少ない検査で、肝臓がんを疑った場合に第一に行われることが多い検査です。
腹部超音波検査は健診でも簡便に行われており、分かる情報も多いのでとても有用な検査となります。当院でも腹部超音波検査は行っております。

6.3造影CT検査

造影剤を血管内に注射してCT検査を行い、超音波検査同様に癌の大きさや個数、血管との関係、肝臓の形、腹水、遠くの臓器への転移などについても調べることができます。

当院でも造影CT検査を行っております。詳しくは当院医師・スタッフまでお尋ねください。

6.4 肝生検

画像検査で悪性か良性かの判断が難しい場合に行われることがある検査です。
超音波検査で病変を確認した上で、腹部に生検針を刺し、組織の一部を採取してきます。

7 肝臓がんの治療について

肝臓がんの治療は、主に上にあげた検査を組み合わせて、大きさや個数、周囲の血管との関係、転移の状況でステージを決定し、全身状態と肝予備能(肝機能がどれくらい保たれているか)を考慮して以下の治療法が選択されます。

7.1 手術

肝予備能が保たれ、遠くの臓器に転移がなく、癌の個数が少ない場合に行われます。癌の部位や肝機能によって切除する範囲が決定されます。

また癌の部位や個数によってはお腹に小さい穴を開けて手術器具を挿入して行う腹腔鏡手術も行われることがあります。
その他条件を満たせば、肝臓を全て取り出して臓器提供者から肝臓を移植する肝移植という方法もあります。

7.2 局所療法(ラジオ波焼灼療法)

肝予備能が保たれ、遠くの臓器に転移がなく、癌の個数が少なく小さい場合に行われます。
お腹の皮膚から癌に直接針を刺して、通電して針の先端に高熱を発生させることで癌を焼灼(焼く)する治療です。

前述する手術と比較して、体の負担が少ない治療法です。

7.3 塞栓療法(TACE/TAE)

肝予備能が保たれ、癌が大きかったり個数が多かったりして手術や局所治療が行われない場合に選択されます。
X線を使って手や足の付け根の動脈からカテーテルを入れ、癌の近くまで進めて、そこから抗癌剤や塞栓物質を投与する治療です。

根治性(癌を完全に消滅させる)は高くないため、時間をおいて再度同じ治療を行い、癌をコントロールすることが多いです。

7.4 薬物療法

上述する治療の適応はなく、肝予備能と全身状態が保たれている場合に行われます。
肝細胞がんの薬物療法では、癌細胞の血管新生(癌細胞が維持・増殖に必要な栄養や酸素を供給するために新しく血管を作ること)を抑える分子標的薬という薬剤が中心となり使用されます。

最近では免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて使用するようになってきています。

7.5 放射線治療

手術や局所治療が難しい場合や血管内まで広がった癌に対する治療法として放射線治療が行われることがあります。
また骨や脳に転移したときの症状緩和目的で行われることがあります。

その他、癌が大きく手術が不可能な場合に、重粒子線や陽子線といった治療が受けられる場合もありますが、治療できる施設は限られています。

8 肝臓がんの予防について

肝臓がんの原因の8割はB型肝炎・C型肝炎ウイルスと言われており、血液検査でも感染の有無を調べることができます。

またこれらのウイルスの持続感染が判明しても、抗ウイルス薬やインターフェロンなどの投与によって近年ではかなりの確率で治療することができるようになっています。

その他節度ある飲酒や禁煙、肥満、糖尿病に注意し、規則正しい生活を送ることが大切です。

9 肝臓がんを放置すると

肝臓がんは早期の場合は、手術や局所治療による根治が可能です。
しかし進行して他の臓器に転移する状況になると、根治的治療が難しくなります。
そのため、なるべく早期に発見して早期に治療することが大切と考えられます。

10 肝臓がんの患者様の経過の例

10.1 60歳男性

以前C型肝炎ウイルス感染を指摘されたことがあるが放置していた。
今回久しぶりに受けた人間ドックの腹部超音波検査にて肝左葉に3cm大の腫瘤を指摘された。

血液検査と造影CT検査から肝細胞がんの診断となった。
肝切除が行われ、その後再発なく経過している。

10.2 70歳男性

飲酒によるアルコール性肝硬変と診断され、定期通院、内服加療を行っていた。
禁酒を指導するも守れずに飲酒を継続していた。
定期の腹部超音波検査で肝右葉(肝臓の右側)に2cm大の腫瘤を認めた。

血液検査と造影CT検査から肝細胞がんの診断となった。
肝予備能から手術は困難と判断され、局所療法(ラジオ波焼灼療法)が行われた。
以降は禁酒され、再発なく経過している。

11 肝臓がんの症状かなと思ったら

倦怠感やむくみ、腹水によるお腹の張り、黄疸、長く続くお腹の圧迫感や腹痛に気づかれた方は、必ず一度消化器内科を受診しましょう。

新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、肝臓がんの適切な検査、診断が行えます。
治療が必要な場合は適切な病院へご紹介いたします。

詳しくは当院医師、スタッフまでお気軽にお尋ねください。

12 診療費用

当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
CT検査 5000円前後
尿流量動態検査 1500円
膀胱鏡検査 3000円
胃カメラ 4000円前後
大腸カメラ 5000円前後

※3割負担の場合

この記事を執筆した人
久田裕也
医師 久田裕也

名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。

新橋院

大宮院

池袋院

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME