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HIV の初期症状(早期発⾒・早期治療のために)

[2024.06.10]

はじめに

HIV感染者は20~30代に多いって知っていますか?

厚⽣労働省の統計によると、20~30代のHIV感染者は全体の約68%を占めています。性活動が活発な年代とはいえ、その割合の多さに驚きます。
HIVやエイズという⾔葉を聞いても「⾃分には関係ない」「まさか⾃分が感染するわけがない」と思われている⽅も多いと思います。
しかし、HIVやエイズは「誰でも」「今⽇にでも」感染する恐れがある⾝近な感染症となっていることを理解し、1⼈1⼈が⾃覚を持って⾏動していく必要があるのではないでしょうか。
本記事では決して⼈ごとではないHIVやエイズについて分かりやすく説明するとともに、早期発⾒・早期治療のために⾒逃せない初期症状や検査、また近年⾶躍的に進んだ治療などについてもお伝えさせていただきます。

1 HIV/エイズの歴史

エイズは1981年にアメリカで初めて認識されましたので、実はまだ40年程度しか経っていないのです。⽇本では1983年に初めてエイズ患者が報告されています。当時は有効な薬もなかったため、世界中で多くの⽅が亡くなるパンデミックを起こし、死の病として恐れられていました。

2 HIVとは?エイズとは?

HIVとは(Human Immunodeficiency Virus)の頭⽂字をとったもので、⽇本語でいうと「ヒト免疫不全ウイルス」のことを⾔います。私たちの⾝体は免疫システム(⽩⾎球のうち特にCD4リンパ球)によって様々な病原体から守られていますが、HIVはその免疫細胞に感染し、免疫⼒を低下させてしまいます。

⼀⽅、エイズ(AIDS)とは(Acquird Immuno DeficiencySyndrome)の頭⽂字をとったもので、⽇本語でいうと「後天性免疫不全症候群」のことを⾔います。
HIVが免疫細胞を攻撃し続けた結果、免疫が保たれなくなり、健康な状態では病気を起こさないような病原体によって引き起こされる様々な感染症を引き起こした状態を指します。
その病気は「⽇和⾒感染症」と⾔い、23種類もの指定された疾患(真菌症・原⾍症・細菌感染症・ウイルス感染症・悪性腫瘍・その他)があり、この中のいずれかを発症した時点でエイズの発症と診断されます。

つまり、エイズは病気の名前であり、HIVはその原因となっているウイルスの事を⾔います。

3 感染経路は?

3-1 性⾏為感染

HIV感染の原因の9割を占めます。
精液(先⾛り液も含みます)、膣分泌液にHIVが多く含まれており、性⾏為中に膣や肛⾨、⼝などの粘膜や傷⼝を介して感染します。肛⾨の粘膜は薄いため、肛⾨を使った性⾏為では感染リスクが上がってしまいます。
また、淋菌クラミジアなど他の性病にかかっていると粘膜が弱くなっているため、HIVにも数倍感染しやすくなると⾔われています。特に梅毒やB型肝炎はHIVとの重複感染が多くなっています。

3-2 ⾎液感染

医療従事者の針刺し事故、薬物使⽤の針の使い回しなどが挙げられます。

3-3 ⺟⼦感染

妊娠中に感染していると、胎盤を通じて、産道を通じて、⺟乳を通じて⾚ちゃんへ感染する可能性があります。

4 HIVの症状

HIVに感染すると急性期(感染初期)、無症候期、エイズ期と進⾏していきます。

4-1 急性期

感染機会があってから2〜3週間後に発熱、喉の痛み、筋⾁痛、⽪疹、頭痛、体のだるさ、下痢などの症状が現れますが⾃然と治ってしまいます。
そのため「⾵邪をひいた」「疲れが出た」「インフルエンザかな」など、この段階でHIV感染を疑って受診するケースは稀となっています。
しかも、全く症状が出ない⽅も⼀定数いるというのが現状です。

しかし、この時期から他の⼈に感染させる可能性があるというのが⾮常に怖いところです。

4-2 無症候期

急性期の症状が⾃然と治まった後、症状のない無症候期に⼊ります。
体の免疫の⼒でウイルス量がある程度抑えられた状態で、数年から中には10年以上何も症状のないまま経過する⼈もいます。
症状がなくてもHIVは体の中で毎⽇100億個くらい増え続け、免疫を破壊し続けます。

4-3 エイズ期

健康な時だと1μℓの⾎液中にCD4リンパ球が700〜1500個ありますが、200個未満になると免疫が保たれなくなり、免疫不全状態となり、エイズを発症してしまいます。

5 感染を調べるにはどうすればいいの?

感染を調べるためには⾎液検査をします。
感染機会があってからすぐに検査をしても正確な結果が得られない可能性があるため、60⽇以上開けてから検査を受けます。
検査をした当⽇に結果が出る即⽇検査の場合は感染機会があってから90⽇以上開けないと正確な結果が得られませんので注意が必要です。

ただし、先述したようにHIVに感染するとその他の性感染症にも感染しやすくなるため、検査を受ける場合はHIVだけではなく、その他の性感染症までしっかりと調べておく事が理想です。

6 感染していたら

現在のところ、HIVを完全に排除する薬はまだありません。
新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは陽性の患者様は専⾨病院を紹介させていただいております。

現在、治療は⾶躍的に進歩し、ウイルスが増殖していく過程の異なるポイントで作⽤する3〜4種類の抗HIV薬を組み合わせて使⽤していくことで、⽣涯に渡り、AIDSを発症せずに⽣活していく事が可能となっています。
最近では2〜3種類の薬の成分が1錠の中に含まれているものも開発され、患者さんの負担が⼤きく軽減されました。
また、2022年6⽉には⽇本初となる⻑時間作⽤型注射薬が承認され、1〜2か⽉間隔での治療も可能となりました。
さらに2023年8⽉には世界初、年2回投与の多剤耐性HIV感症治療薬が⽇本での製造販売を承認されたという明るいニュースも流れました。

このようにHIV/AIDSの治療は⽇進⽉歩を遂げており、ウイルス量がほとんど測定できないレベルにまで抑える事が可能になっています。HIVに感染した患者様が幹細胞移植後にウイルスが体内から検出されない寛解状態になり、それを維持しているという症例も発表され、明るい未来がそこまで⾒えてきました。

7 感染を防ぐために

HIVの感染⼒はとても弱く、⽇常⽣活では性⾏為以外で感染することはほとんどありません。タオルの共⽤、トイレの共⽤、同じお⾵呂やプールに⼊る、咳やくしゃみなどなどで感染することはありませんので安⼼してください。

逆に考えると、感染を防ぐために私たちがすべき⾏動は明らかですね。コンドームを正しく使⽤する、不特定の相⼿との性⾏為をしない、性⾏為の後はシャワーできれいに洗い流す、⽔分をしっかり摂って菌を洗い流すなど、基本的な事が⼀番⼤切になってきます。

8 感染が⼼配になったら

HIVに感染していても⾃覚症状がないため、感染に気づくことは困難です。
そのため、疑わしい⾏為があったり、過去のパートナーが気になったりした場合には⾎液検査を受けましょう。
保健所では無料で検査をおこなっており、匿名で受ける事ができます。
しかし、先述したようにHIVと他の性感染症との重複感染が多い現状があるため、HIVだけを検査しても他の性感染症を⾒逃す恐れがあり危険です。HIVとの重複感染が多いとされている梅毒やB型肝炎は重症化すれば命に関わる病気です。そのため、ブライダルチェックなどで数種類の性感染症を調べておく事が⾮常に⼤切なのではないでしょうか。

9 まとめ

HIVやエイズはこの40年間で⾶躍的に研究が進み、早期に発⾒できれば、ウイルス量がほとんど検出されない程度にまで治療する事が可能となりました。
私たちに必要なのは正しい知識を得る事と、早期発⾒のために進んで検査を受ける事です。ご⾃分のため、⼤切な⼈を守るためにも今まで検査を受けたことのない⽅は⼀度検査を受けてみてはいかがでしょうか。

新橋消化器内科・泌尿器科クリニックではHIV/淋菌/クラミジア/梅毒/B型肝炎/C型肝炎をはじめとする性感染症を含んだブライダルチェックをおこなっております。男性、⼥性ともに受ける事ができ、結果は郵送でお送りさせていただきます。また、待合室にはパーテーションを⽤いたブースもありますので、プライバシーにも配慮しております。
HIVの検査、性感染症の検査は新橋消化器内科・泌尿器科クリニックにご相談ください。

助成金を含めたブライダルチェックの詳しい説明は ▶︎こちら

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

 

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