大腸ポリープの症状、原因、検査・治療(切除)について
大腸ポリープとは、大腸の壁の最も浅い粘膜から内側に盛り上がったイボ状の隆起のことです。
多くは無症状で、検診の便潜血検査が陽性であった事から大腸内視鏡検査が行われ、発見されることがほとんどです。
大腸ポリープの大半は良性ですが、一部は悪性(=大腸がん)になる可能性があるもの、もしくは悪性のものがありますので、早期発見、早期治療が非常に大切です。
この記事では大腸ポリープの症状、原因、検査・治療(切除)法について解説しますので参考にしていただければ幸いです。
1 そもそも大腸とは何をするところか
大腸は管状の臓器で、口から始まり食道、胃、十二指腸、小腸の次で肛門の前の臓器です。
長さは個人差があり1~2メートル程度で、口側から順に盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸で構成されています。
主な機能は小腸から送られてきた消化物の水分の吸収し、便を形成することです。
大腸ポリープや大腸がんが出来ることで、大腸の機能が損なわれ、下痢や便秘や腹痛といった症状が出ることがあります。
2 大腸ポリープとは
大腸ポリープは、腺腫や癌といった腫瘍性ポリープと、過形成性ポリープや炎症性ポリープといった非腫瘍性ポリープに分けられます。
このうち腺腫と一部の過形成性ポリープが癌化のリスクがあるポリープと言われており、このポリープを早期に切除することによって、将来の大腸がんのリスクを減らすと報告されています。
大腸がんの90%が大腸ポリープから癌化しており、大腸ポリープをいかに早い段階で見つけるかが大切になってきます。
3 大腸ポリープの現状
大腸ポリープは食の欧米化や生活習慣の変化により増加していると言われています。
まだ同様に大腸がんも増えております。大腸がんは男女の合計で最も罹患数(かかる方の数)が多い癌です。
4 大腸ポリープの原因・リスク
大腸ポリープの原因は詳しくは分かっていませんが、加齢や生活習慣が関わっていると考えられています。
年齢は40歳頃からポリープの発生頻度が増加します。
生活習慣はハムやソーセージなどの加工肉や赤身肉の過剰摂取や、過度の飲酒や喫煙がリスクと考えられています。
その他、稀ですが遺伝性疾患が影響している場合があります。
5 大腸ポリープの症状について
大腸ポリープが小さいうちは自覚症状がほとんどありません。
大きくなったり癌化すると、便潜血検査が陽性になったり、血便が出るなどの出血の症状が起こります。
ポリープが大きくなると、便の通り道を塞いでしまうことで便が細くなったり、便意はあっても便が少ししか出ない症状が出たり、進行すると小腸からの消化物が流れなくなる腸閉塞の症状が出る場合があります。
6 大腸ポリープの検査について
6.1 血液検査
血液検査では、出血による貧血の値(ヘモグロビン)や腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)などを測定します。
しかし採血検査はポリープがかなり大きくなった場合や進行した癌になった場合に異常値となることが多く、あくまで補助診断的な役割になります。
6.2 便潜血検査
便潜血検査は、便の中の微量な出血を調べる検査で、大腸がん検診で広く行われています。
大腸がん(進行癌)がある場合は90%以上で検査は陽性となりますが、良性のポリープに関してはあまり便潜血陽性にはなりません。
6.3大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は、健診で便潜血が陽性の場合、次に行われる検査です。
肛門から内視鏡を挿入し直腸から盲腸まで観察を行います。
ポリープや癌などを直接観察することができ(数ミリのポリープも発見できます)、大きさや形、血管構造などからポリープの種類まで診断することができます。
更にその場でポリープを切除することもできます。
6.4 その他の検査
その他の検査として、レントゲンを使った注腸検査やCTコロノグラフィーがあります(いずれも当院では行っておりません)。
これらの検査は、条件によっては病変が見えづらくなることがあり、検査時にポリープの切除を行うことができないなど制限があります。
7 大腸ポリープの治療について
ほとんどの大腸ポリープと一部の早期の大腸がんは大腸内視鏡で切除することができます。
内視鏡切除の方法としてポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術(EMR)があります。
ポリペクトミーは内視鏡の先端からスネアという金属の輪っか状のワイヤーを出してポリープを縛って切除します。
高周波電流で焼き切る場合と電流を使用せず切除する場合があります。
一方で、EMRは内視鏡の先端から局注針という注射針で刺して水を入れ、ポリープと粘膜を浮き上がらせてから、スネアで縛って高周波電流で焼き切ります。
切除した部位から出血がある場合には、内視鏡用のクリップで塞ぐなどの処置を加えます。
クリップは1~2週間で自然に肛門から便と一緒に体外に排出されます(多くはクリップが非常に小さいため気づきません)。
起こりえる合併症としては、切除した傷口からの出血と、傷口に穴が開く穿孔があります。
そのため治療後1週間程度は(病変により異なります)、飲酒や激しい運動、旅行を避けるなどの制限があります。
また、血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を服用している方は術後の出血のリスクがありますので、これらの薬を服用している場合は必ず事前にお申し出ください。
8 大腸ポリープの予防について
ハムやソーセージなどの加工肉や赤身肉の過剰摂取や、過度の飲酒や喫煙がリスクと考えられているため、それらを控えていただくことが予防となります。
また3年に1度は大腸内視鏡検査をすることで、大腸ポリープを大腸がんに進行させない予防になります。
9 大腸ポリープを放置すると
腺腫や一部の過形成性ポリープは癌化のリスクのあるポリープと言われており、放置すると、大腸がんになる場合があります。
ポリープや一部の早期の大腸がんであれば体に負担の少ない内視鏡で切除ができます。
一方で進行した状態で癌が見つかると、手術や場合によっては手術ができずに、抗癌剤治療が必要となる場合があります。
そのため、早期発見・早期治療が重要と言われており、異常があれば早めの受診が大切です。
10 大腸ポリープの患者様の経過の例
10.1 55歳女性
検診で行われた便潜血検査で陽性の結果を指摘され、当院を受診された。大腸内視鏡検査を行い、S状結腸の8mm大のポリープを切除した。
病理診断は腺腫の結果であった。1年後に大腸内視鏡検査でフォローの方針とした。
10.2 65歳男性
数か月前からの血便があり、当院を受診された。大腸内視鏡検査を行い、内痔核を認め、そこからの出血と考えた。
また上行結腸に20mm大のポリープを認めた。
サイズが大きかったため、近隣の総合病院に紹介し、内視鏡的切除された。
病理診断は早期大腸がんの結果であった。
11 便潜血検査陽性や血便がみられたら
健診で便潜血陽性や、血便が続く場合は、必ず一度消化器内科を受診しましょう。
新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、大腸ポリープの適切な検査・診断・治療が行えます。
専門的な治療が必要な場合は適切な病院へご紹介いたします。
詳しくは当院医師・スタッフまでお気軽にお尋ねください。
12 診療費用
当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
尿流量動態検査 | 1500円 |
膀胱鏡検査 | 3000円 |
胃カメラ | 4000円前後 |
大腸カメラ | 5000円前後 |
※3割負担の場合
名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。