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大腸がんの初期症状・原因(リスク)・検査・治療について

大腸がんと聞くと怖い病気を想像する方も多いかもしれません。
大腸がんは大腸の粘膜からできる悪性腫瘍の総称です。

50歳以上から急激に増え、罹患率(かかっている方の数)、死亡率ともに増加傾向にあります。

罹患率(かかっている方の数)は男女の合計では全癌のうち大腸がんが一番多い癌となっております。
大腸がんは初期には無症状のことが多いですが、進行すると手術や抗がん剤治療が必要ですので、早期発見や早期治療が非常に大切です。

この記事では大腸の働きや大腸がんの症状、原因、検査(大腸内視鏡検査・大腸カメラ)、治療法について解説しますので参考にしていただければ幸いです。

1 そもそも大腸とは何をするところか

大腸は長さが約1.5メートル程度の管状の臓器です。
大腸は盲腸から始まり、結腸(上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸)、直腸に分けられます。

大腸の主な働きは、小腸から送られてきた消化物の水分と電解質を吸収し、固形の便を形成することです。

大腸に癌ができたり、炎症が起きることで大腸の正常な機能ができなくなり下痢や便秘や腹痛などの症状が起こります。

2 大腸がんとは

大腸がんは大腸の粘膜からできる悪性腫瘍の総称です。
大腸がんは良性の大腸ポリープが癌化して発生するものと、正常の粘膜から発生するものがあります。

90%以上の大腸がんは良性のポリープが癌化して発生します。なので定期的に大腸内視鏡検査を行い、ポリープを発見する必要があります。

部位ではS状結腸や直腸に多く発生すると言われています。

3 大腸がんの現状

大腸がんのり関数(かかっている方の数)は、国立がん研究センターがん情報サービスの統計によると、2019年時点で10万人あたり男性143人、女性104人で、男女ともに増加傾向にあります。

男女の合計は大腸がんが罹患数(かかっている方の数)が1位です

4 大腸がんの原因・リスク

大腸がんの原因は主に生活習慣の欧米化などの要因が大きいと考えられています。
食生活では動物性脂肪の赤身肉や加工肉(ハムやソーセージ)の過剰摂取や食物繊維の摂取不足が原因の一つと考えられています。

その他生活習慣では運動不足や肥満、アルコールの過剰摂取、喫煙なども関与していると言われています。

大腸内視鏡検査で確認できる大腸ポリープ

また大腸ポリープが癌化することが大腸がんの90%であるため、定期的に大腸内視鏡検査で大腸ポリープがないかを確認しなければいけません。

5 大腸がんの症状について

大腸がんは早期には無症状のことも多いですが、進行するに従い、以下のような症状が出る場合があります。

5.1 血便・貧血

癌からの出血により、排便の時に血便が出ることがあります。
出血に気づかなくても、慢性的に癌から出血することで、貧血症状が現れたりします。

5.2 排便習慣の変化・腹痛・嘔吐

大腸がんが進行して大腸の内腔を占めるようになると、便が細くなったり、便秘や下痢を繰り返すようになったり、便をしても出し切らない感じ(残便感)が出たりすることがあります。

更に進行して癌が大腸の内腔を塞ぐほどになると、腹痛が出現したり、完全に便が通らなくなったりして腸閉塞になることがあります。

5.3 食欲不振・体重減少

食欲不振や体重減少は、癌細胞が増え、悪液質(栄養不良でやせたり衰弱した状態)になることで起こります。初期の大腸がんでは起こりませんが、大腸がんが進行することで食欲不振や体重減少が起こってきます。

6 大腸がんの検査について

6.1 便潜血検査

主に大腸がん検診で用いられています。
便を採って、大腸がんと便がこすれて出血する際に出る血液の反応を調べます。

肉眼的にはわからない少量の出血でも検出することができ、大腸がんの症状が出るよりも早く、便潜血検査が陽性として検出されると言われています。

6.2 血液検査

癌からの出血が続くと、ヘモグロビン値が低下し、貧血がみられることがあります。
また腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)の上昇がみられることがあります。

腫瘍マーカーは癌の勢いや進行度を反映すると言われていますが、進行した状態でないと数値が上がらないことも多く、あくまで画像検査が診断の中心となります。

6.3 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

便潜血検査が陽性となった場合、次に行われることが多い検査です。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)により、盲腸から直腸まで全大腸の癌を直接調べることができます

大腸内視鏡検査で観察した大腸がん

癌の見た目により、癌の深さ(深達度)を診断し、治療法を決定する際の参考とします。
また同時に生検(組織検査)を行い、癌細胞がいるかどうかを調べることができます。

6.4 CT検査

大腸がんの深さやリンパ節や肝臓、肺など他の臓器に転移がないかを調べ、治療法を決定する際の参考にします。当院でもCT検査を行っております。詳しくは当院医師・スタッフまでお尋ねください。

6.5 注腸検査

肛門から造影剤を注入して、大腸がんの部位や内腔の狭窄の程度(どれくらい狭くなっているか)を調べることができます。

当院では注腸検査は行っておりません。

7 大腸がんの治療について

大腸がんの治療は、主に上にあげた検査を組み合わせ、深さや転移の状況でステージを決定して治療法が選択されます。

7.1 内視鏡的切除

大腸がんが一番浅い粘膜の層に留まっている場合、大腸内視鏡を用いて粘膜の下の層(粘膜下層)を金属の輪っかのような器具(スネア)や電気メスのようなもので切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という方法がとられます。

後述する外科的切除と比較して、体の負担が少ない治療法です。

7.2 外科的切除

大腸がんが内視鏡的切除できないくらい深い層まで進行しているけれど、遠くの臓器に転移していない場合は、外科的切除が行われます。

手術には開腹手術の他、腹腔鏡下手術やロボット支援下腹腔鏡下手術があります。大腸がんの広がっている可能性のある大腸と周りのリンパ節も切除し、最後に残った大腸をつなぎ、新しい食べ物の通り道を作っていきます。

7.3 抗癌剤

大腸がんが遠くの臓器に転移しており、切除が困難と判断された場合には抗癌剤が使用されます。
抗癌剤には細胞傷害性抗癌剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があり、単独または組み合わせて使用します。

全身状態や癌の状況、通院頻度などにより薬剤が選択されます。
また外科的切除後の癌の再発を予防するために決まった期間、抗癌剤が使われる場合もあります。

7.4 免疫治療

免疫の力を利用して癌を攻撃する新しい治療法です。

ただ現時点で大腸がんの治療に効果が証明されているものは、MSI-Highという遺伝子異常がある場合にのみ使用できるペムブロリズマブというお薬のみとなっています。詳しくは当院医師までお尋ねください。

7.5 放射線治療

癌の再発を予防する目的で使用する場合と、骨盤内の癌や骨、脳への転移による症状緩和目的で使用する場合があります。

8 大腸がんの予防について

大腸がんの原因は生活習慣と深く関係していると言われており、これらを改善することが予防につながると考えられています。

具体的には赤身肉や加工肉などの動物性脂肪の摂取を減らすこと、食物繊維の摂取を増やすこと、散歩やジョギングなどで体を動かし肥満を防止すること、節度ある飲酒にすること、禁煙することなどが大切と考えられます。

大腸内視鏡検査の画像

また大腸ポリープから癌化するために定期的な大腸内視鏡検査がとても重要です。

9 大腸がんを放置すると

大腸がんは早期の状態や他の臓器に転移がない場合は、切除により癌を完全に治すことができる根治的治療が可能です。

一方で、進行して他の臓器に転移する状況になると、根治的治療が難しくなります。
なるべく早期に発見して早期に治療することが大切と考えられます。

10 大腸がんの患者様の経過の例

10.1 50歳女性

検診の便潜血検査で陽性の診断となり当院を受診された。
大腸内視鏡検査を行い、S状結腸に20mm大の大腸がんを認めた。

CT検査ではリンパ節や遠くの臓器への転移は認めず、深達度は粘膜にとどまっており、早期癌の診断で内視鏡的切除可能と判断された。

他院に紹介、内視鏡的切除(ESD)が行われ、特に合併症なく退院された。
以降、癌の再発なく経過している。

10.2 75歳男性

10年以上検診は受けていなかった。
以前より便秘気味で、3か月前より便が細くなり、排便しても出きらない感じがあったが放置していた。
3日前から排便がなくなり、腹痛が出現したため当院を受診された。

大腸内視鏡検査を行い、直腸からS状結腸にかけて40mm大の大腸がんを認め、癌により内腔の狭窄を認めた
CT検査では肝臓に多発する転移の所見を認めた。直腸がん、多発肝転移の診断となり、他院へ紹介となった。
直腸がんに関しては外科的切除が行われた。

多発肝転移に関しては外科的切除困難と判断され、抗癌剤治療が行われている。

11 大腸がんの症状かなと思ったら

検診で便潜血検査が陽性となった、血便が出る、排便習慣の変化があった、腹痛、体重減少、食欲不振などがあった場合は、必ず一度消化器内科を受診しましょう。

新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、大腸がんの適切な検査・診断が行えます。治療が必要な場合は適切な病院へご紹介いたします。

詳しくは当院医師・スタッフまでお気軽にお尋ねください。

12 診療費用

当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
CT検査 5000円前後
尿流量動態検査 1500円
膀胱鏡検査 3000円
胃カメラ 4000円前後
大腸カメラ 5000円前後

※3割負担の場合

この記事を執筆した人
久田裕也
医師 久田裕也

名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。

新橋院

大宮院

池袋院

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