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ピロリ菌の症状・原因・検査・治療について

胃がん99%はピロリ菌が原因です。
ピロリ菌の保菌率は年代別で異なり、10〜20歳代では10%程度ですが、年齢が上がるほど保菌率も⾼くなり、50歳以降の⽅の70〜80%がピロリ菌に感染していると⾔われています。


しかし、ピロリ菌に感染したからといって、直ちに胃がんになるわけではありませんし、ピロリ菌感染を放置せずに除菌を⾏えば、胃がんの発症リスクを3〜4割減少させることが分かっています。
また、ピロリ菌は胃がんだけではなく、これから述べる様々な疾患を引き起こすことが分かっていますので、早期に発⾒して早期に治療することが⼤切です。

この記事では、ピロリ菌感染について詳しく解説しますので参考にしていただければ幸いです。

1 ピロリ菌とは

ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリという細菌です。1983年にオーストラリアのウォーレンとマーシャルが胃炎患者様の胃の粘膜にらせん状の細菌を発⾒しました。

それまでは、強い胃酸の影響で胃の中では細菌は⽣息できないと考えられておりましたので、胃粘膜に細菌が⽣息するという発⾒は当時の常識を覆すものであり、世界を驚かせました。ピロリ菌の発⾒によるウォーレンとマーシャルの医学への貢献は⼤きく、2⼈は2005年のノーベル医学⽣理学賞を受賞しました。

2 ピロリ菌が引き起こす胃の疾患

ピロリ菌を発⾒したマーシャルは培養したピロリ菌を飲み込み、⾃分⾃⾝の体で⼈体実験を⾏いました。その結果、ピロリ菌に感染した10⽇後には急性胃炎になることを確認しました。その後の様々な研究でピロリ菌に感染後、数週から数カ⽉で100%の⼈が慢性胃炎になり、そのまま放置すると萎縮性胃炎に移⾏し、さらに胃がんへと進⾏する可能性があることが分かりました。

ピロリ菌に感染すると胃痛や腹痛、胸焼け、胃もたれ、吐き気、⾷欲不振、⾷後の膨満感、ゲップなどの症状が現れることがあります。その⼀⽅、ピロリ菌に感染しても⾃覚症状に乏しい場合もありますので、早期発⾒には少しの胃の不調を放置しないことも重要です。⾃覚症状の有無にかかわらず、ピロリ菌に感染すると下記のような胃の疾患を引き起こすことがあります。

2-1 慢性胃炎

ピロリ菌に感染すると、ピロリ菌が作り出すウレアーゼという酵素が胃の中の尿素を分解してアンモニアを発⽣させます。こうして発⽣したアンモニアが胃の粘膜を傷つけるために強い胃炎を引き起こし、ピロリ菌に感染している状態が⻑く続くと慢性胃炎を引き起こします。

ピロリ菌感染を原因とする慢性胃炎はヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と呼ばれます。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎を放置すると胃潰瘍、⼗⼆指腸潰瘍、萎縮性胃炎などを引き起こし、その⼀部が胃がんに進⾏することもあります。

2-2 萎縮性胃炎

前述した慢性胃炎の状態が⻑期間続くと、胃液や胃酸などを分泌する胃の粘膜組織が正常に機能できなくなり、薄くなって縮⼩し、萎縮性胃炎という状態になります。

萎縮性胃炎になると、胃の機能が低下し、胃液が⼗分に分泌されずに⾷べ物が消化されにくくなるため、⾷欲不振や胃もたれなどの症状が現れることがあります。

2-3 胃潰瘍、⼗⼆指腸潰瘍

胃潰瘍、⼗⼆指腸潰瘍を繰り返す患者様では、ピロリ菌の感染が原因となっているケースが多く、ピロリ菌の除菌を⾏うことで再発しにくくなる傾向にあります。

2-4 胃ポリープ

胃ポリープは、イボのように胃の粘膜が盛り上がった隆起性病変を⾔います。しかし、胃ポリープは⾃覚症状に乏しく、健診で指摘されて初めて気づくという⽅がほとんどです。

胃ポリープは胃底腺ポリープ・過形成性ポリープ・特殊型ポリープ(炎症性、症候性、家族性)の3つに分類されます。

  • 胃底腺ポリープはピロリ菌感染のない綺麗な胃に発⽣するポリープです。⼤きさは2~3mmで胃の中に複数認められることもあります。胃底腺ポリープは癌化の⼼配はありません。胃カメラで観察すると、胃粘膜と同じ⾊のポリープが確認できます。
  • 過形成性ポリープは、ピロリ菌感染があり、萎縮性胃炎のある場合に発⽣することの多いポリープですが、除菌治療を⾏い胃炎が改善されると、ポリープが⼩さくなったり⾃然に消失したりすることがあります。しかし、2㎝を超えるような過形成性ポリープは、稀に癌化することもあります。胃カメラで観察すると⾚みの強いポリープが確認できます。
  • 胃底線ポリープでも過形成性ポリープでもないものを特殊型ポリープと⾔います。そのうち、胃腺腫は⻑期に渡りピロリ菌感染があり、萎縮性胃炎を起こした胃粘膜に起きやすく、癌化する可能性があります。胃カメラで観察すると⽩⾊調のポリープが確認できます。

    胃カメラで観察できる胃ポリープ

2-5 胃MALTリンパ腫

胃MALTリンパ腫は胃にできる悪性リンパ腫の約40%を占め、そのうちの約80%にピロリ菌感染が関連していることが分かっています。初期の段階ではほとんど⾃覚症状がなく、胃カメラ検査で偶然に発⾒されることがほとんどです。

進⾏に伴い胃部不快感、つかえ感、倦怠感などが出現し、ゆっくりと進⾏する腫瘍です。ピロリ菌に感染している場合には、除菌をすることで完治する⽅も多くいます。

2-6 特発性⾎⼩板減少性紫斑病

特発性⾎⼩板減少性紫斑病(ITP)は、明らかな原因がないのに⾎⼩板が減少し、様々な出⾎症状を起こす病気です。

特発性⾎⼩板減少性紫斑病の患者様の約60%がピロリ菌に感染していることが分かっており、ピロリ菌の除菌を⾏うと、除菌に成功した患者様の約半数に⾎⼩板増加が認められています。

2-7 胃がん

初めにお伝えしたように、胃がんの原因の99%はピロリ菌感染によるものです。ピロリ菌感染による慢性胃炎が⻑期間に渡って続くと萎縮性胃炎になり、さらに状態が進⾏すると胃がんになる確率が⾼まります。

その他、鉄⽋乏性貧⾎、慢性蕁⿇疹、パーキンソン症候群、アルツハイマー病、糖尿病、⾃⼰免疫疾患などはピロリ菌感染との関連があると推測されていますが、現段階では科学的な根拠が⼗分に証明されているものはありません。

3 ピロリ菌の感染経路

ピロリ菌の感染経路ははっきりとは解明されていませんが、⼝から⼊る経⼝感染が最も多いと⾔われています。ピロリ菌は井⼾⽔や⼟壌などに⽣息する菌であり、井⼾⽔を飲んでいた50〜60代以降の70〜80%の⽅がピロリ菌に感染していると⾔われています。その⽅々がお孫さんなどに同じ箸を使って⾷べ物を与えることでお孫さんが感染するというケースも報告されています。

⼤⼈になってから箸の共⽤やキスなどによってピロリ菌の感染は起こらないと考えられ、ほとんどが5歳以下の幼児期に感染すると⾔われています。⼩さなお⼦様がいるご家庭では、ピロリ菌の感染には注意が必要です。

4 ピロリ菌の検査⽅法

ピロリ菌に感染している場合、保険適⽤でピロリ菌の除菌を⾏うことができます。ピロリ菌の検査には、内視鏡を使う⽅法と使わない⽅法がありますので詳しく説明していきます。

4-1 内視鏡を使⽤する検査⽅法

胃カメラ検査で胃の組織を採取して調べる⽅法です。以下の3種類の⽅法があります。

4-1-1 迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が作り出すウレアーゼという酵素が胃の中の尿素を分解してアンモニアを発⽣させることから、アンモニアの量を調べることでピロリ菌感染の有無を判定することができます。

4-1-2 鏡検法

採取した組織を染⾊することでピロリ菌を顕微鏡で観察します。

4-1-3 培養法

採取した組織を培養し、ピロリ菌が増えるかを調べます。

4-2 内視鏡を使⽤しない検査⽅法

内視鏡を使⽤しない⽅法は以下の3種類があります。

4-2-1 抗体測定

⾎液を採取し、ピロリ菌に感染したときにできるピロリ菌抗体の有無を調べることでピロリ菌感染の有無を判定します。

4-2-2 尿素呼気試験

ピロリ菌が作り出すウレアーゼという酵素が胃の中の尿素を分解してアンモニアが発⽣する際、同時に⼆酸化炭素が発⽣し、呼気中に⼆酸化炭素が多く排出されます。
検査薬を服⽤し、呼気中の⼆酸化炭素を測定することでピロリ菌感染の有無を判定します。尿素呼気検査は最も信頼度が⾼い検査となっています。

4-2-3 便中抗原測定

ピロリ菌に感染している場合、糞便中にもピロリ菌抗原が排出されるため、ピロリ菌抗原の有無を調べ、判定します。

5 ピロリ菌の除菌

ピロリ菌の感染が判明した場合には、内服薬によるピロリ菌の除菌を⾏います。
保険適⽤での除菌をする場合、対象となる病気があるかを検査によって確かめる必要があります。保険適⽤でピロリ菌の除菌対象になる⽅は

ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と内視鏡検査で診断された⽅

②胃潰瘍・⼗⼆指腸潰瘍の⽅

③胃MALTリンパ腫の⽅

④特発性⾎⼩板減少性紫斑病の⽅

④早期胃がん内視鏡的治療後の⽅となっています。

また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を服⽤していると結果が偽陽性(陰性であるにも関わらず結果が陽性と判定されること)となることがあるため、プロトンポンプ阻害薬を服⽤中の場合、最低4週間は服薬を中⽌することが望ましいとされています。プロトンポンプ阻害薬の主なものはオメプラゾール、ランソプラゾール、タケキャブ、ネキシウムなどが挙げられます。
使⽤する薬は、1種類の胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗⽣物質の合計3剤を7⽇間服⽤します。除菌治療後にはピロリ菌がいなくなっていることを確認するため、8週間後以降に尿素呼気試験を⾏って判定します。

1回⽬の除菌を1次除菌と呼び、1次除菌が成功せずピロリ菌が残っている場合には、2次除菌(2回⽬の除菌)を⾏います。2次除菌まで⾏った場合、95%以上が除菌に成功すると⾔われており、2次除菌までは保険適⽤となります。

しかし、なんらかの理由で2次除菌に成功しなかった場合には、3次除菌を⾏うことも可能ですが、その場合は保険が適⽤とならずに⾃由診療(⾃費)となります。

6 ピロリ菌治療と胃がん

ピロリ菌の除菌治療によって胃がんの発⽣リスクは低下しますが、完全にゼロになるわけではありません。ピロリ菌に感染していた期間が⻑いほど、慢性胃炎の状態が続いていたと考えられ、胃がんリスクは高くなります。除菌治療後には、胃の粘膜の炎症を回復する為の治療を⾏うことが重要です。また、⼀度除菌しても、再燃というリスクがあります。

再燃は、ピロリ菌の除菌後の判定が偽陰性(ピロリ菌が残っているにも関わらず陰性と判定されること)のため、症状を繰り返すことを⾔います。再燃の場合は再度除菌が必要になります。

7 診療費

初診の診療費⽤は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担)

尿検査のみ 2000円前後
エコー検査のみ 2500円前後
採血+尿検査 3500円前後
採血+尿検査+エコー検査 5000円前後
CT検査 5000円前後
尿流量動態検査 1500円
膀胱鏡検査 3000円
胃カメラ 4000円前後
大腸カメラ 5000円前後

※3割負担の場合

まとめ

当院では、患者様全員を番号でお呼びし、仕切りを設けた待合室を設置し、プライバシーに配慮した診療を⾏っております。経験豊かな専⾨医が患者様お⼀⼈お⼀⼈に寄り添う診察を⼼がけております。
健診でピロリ菌陽性を指摘された、ピロリ菌陽性の家族がいる、胃の痛みや不快感などの症状があるなど、ピロリ菌を疑う症状がある⽅は遠慮なく新橋消化器内科・泌尿器科クリニックにご相談ください。

8 Q&A

内視鏡検査やピロリ菌の除菌にご不安がある⽅は、下記のQ&Aをご覧いただき、その他にもご不明の点があれば、お気軽にご質問ください。

Q:家族がピロリ菌に感染していて除菌しました。私は無症状ですが、除菌した⽅が良いのでしょうか?
A:ピロリ菌に感染していても無症状のケースも多くありますので、まずは検査を⾏うことをお勧めします。
Q:⼦供の頃、井⼾⽔を飲んだことがありますが、ピロリ菌に感染しているかもしれないので、検査をせずに除菌することはできますか?
A:保険適⽤でピロリ菌の除菌を⾏う場合には、内視鏡検査が必須となります。⾃由診療(⾃費)で⾏う場合は、この限りではありません。
Q:内視鏡検査は苦痛を感じそうで不安ですが、不安を軽減する⽅法はありますか?
A:不安を感じる⽅には、当院では鎮静剤を⽤いて検査を⾏うことができます。鎮静剤を使⽤して、ボーっとしている状態で検査を⾏います。鎮静剤の効果には個⼈差がありますが、多くの⽅は全く苦痛を感じずに検査を受けることができます
Q:内視鏡検査のあとは普段通りの⽣活ができますか?
A:検査後、1時間ほど経過したあと、⽔をゆっくり飲み、むせることがなければ⾷事をしても問題ありません。(検査内容によって異なります。)
Q:薬でピロリ菌除菌を⾏う間、アルコールは飲んでも良いですか?
A:飲酒によって薬の作⽤が弱くなるという報告があり、除菌が成功しにくい可能性がありますので、除菌薬を服⽤中はアルコールを控えてください。
Q:除菌で使⽤する抗⽣物質にアレルギーがあるのですが除菌を⾏うことができますか?
A:⼀次除菌と⼆次除菌にはペニシリン系の抗⽣物質を使⽤しますのでペニシリンアレルギーがある患者様には、他の抗⽣物質を使⽤し除菌治療を⾏うことができます。
しかし、その場合には保険適⽤外となり、⾃由診療(⾃費)となります。抗⽣物質のアレルギーがある⽅は、診察時に医師にご相談ください。
この記事を執筆した人
久田裕也
医師 久田裕也

名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。

新橋院

大宮院

池袋院

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