高尿酸血症(痛風)の症状・原因・食事・検査・治療
最近では、『痛風発作』の辛さを告白する人気芸人やタレントなども多く、『痛風発作=痛い』という認識が広がっているようです。
当院でも健康診断で尿酸値が高めと指摘されて受診される患者様が増加傾向にあります。近年、高尿酸血症は若い世代にも多く、30-40代の3割の方が高尿酸血症という報告もあります。
高尿酸血症となり、尿酸値が高い状態を放置するとある日突然、激しい痛みを伴う痛風発作を発症してしまいます。
高尿酸血症について理解すれば、痛風も予防することが可能です。今回の記事では、高尿酸血症について詳しくお話ししますので参考にしていただければ幸いです。
1.痛風
1.1痛風とは
「尿酸値が高いのは痛風ですか?」というご質問を受けることが多くあります。
一般的に同じ病気と認識されている方も多いようですが、厳密に言えば、高尿酸血症=痛風ではありません。
痛風は発作のように突然に発症することから「痛風発作」とも呼ばれ、血液中の尿酸が高い状態が続き、関節内に尿酸が漏れ出して結晶ができた結果、激しい痛みと関節の腫れや赤みなどを生じて発症します。
その症状は、「風があたっただけでも痛い」ということから痛風と呼ばれるようになり、発作時には激しい痛みのため歩行困難になる方も少なくありません。
かつて、痛風はお金持ちの病気と言われ「贅沢病」と呼ばれていました。
その理由は、体内で尿酸が作られる原料となるプリン体が、贅沢な食事に多く含まれていることから、日常的に贅沢な食事を摂るお金持ちがなる病気と考えられていたからです。
しかし近年、日本の食生活は大きく変化し、普段の食事でも尿酸値が高くなり、痛風を発症するリスクが高くなったため、痛風は『現代病』とも言えます。
1.2痛風発作の症状
一般に痛風発作では、足の親指の付け根に痛みと腫れを生じることが多い傾向にありますが、足の甲、ひざ、足首、アキレス腱などにも生じることがあります。
痛風発作は男性に多く発症する傾向があります。発症後、24時間ほどで痛みのピークとなり、それ以降は症状が和らいでいきます。
痛風発作は治療を受けず放置しても10日前後で症状は消えていきます。
しかし、症状が消えたからといって放置すると再発し、それでも放置していると頻繁に再発するようになります。同じ部位に発症を繰り返すと骨や関節の破壊や変形が起きたり、さまざまな合併症を招いたりするリスクがありますので、痛風発作が起きた場合は医師の診察を受け、適切な治療や予防を行うことが必要です。
1.3痛風発作の治療
前述したように痛風発作は、日常生活に支障をきたすほどの激しい痛みに襲われますので、医療機関での治療を行うことをお勧めします。痛風発作の治療では、「痛みを抑える」ことが主となり、症状に応じてロキソニンなどのNSAIDSと呼ばれる鎮痛剤、ステロイド剤、コルヒチンという痛風発作治療薬を使用します。
痛風の原因となる高尿酸血症の治療は、痛風発作が治った後に治療を開始します。その理由は痛風発作中には尿酸値を下げる薬を使用すると症状の悪化を招く恐れがあるためです。
一方、既に尿酸値を下げる薬を飲んでいる方は、痛風発作を発症しても服用を続けてください。
2.高尿酸血症
高尿酸血症の基準となるのは尿酸値であり、血液中の尿酸が7.0mg/dlを超えると、高尿酸血症と診断されます。しかし、尿酸値が7.0mg/dlを超えている場合でも自覚症状がない方も多くいらっしゃいます。
そのため、健康診断等で『尿酸値が高い』と指摘されても医療機関を受診せず、放置する方も少なくありません。
高尿酸血症を放置した場合にはさらに進行し、血中の尿酸が増えて痛風発作を発症しますので、尿酸値が高いと指摘された場合には、お近くの医療機関を受診してください。
2.1尿酸とは
尿酸は、プリン体が分解されたものです。プリン体は、運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー源となる物質であり、核酸を構成する主成分でもあります。体内で生じる以外にも、飲食物に含まれ、食事から取り込まれるプリン体があります。プリン体は、肝臓で尿酸分解され、尿や便として体外に排泄されます。
体内のプリン体が多くなれば、分解されて生じる尿酸値も多くなります。そのため、プリン体を多く含む食品には注意が必要です。
また、ご家族の中に高尿酸血症の方がいる場合は遺伝的に尿酸が高くなりやすい傾向にあります。
高尿酸血症は、血液中の尿酸値が7.0mg/dl以上ですが、痛風発作の既往歴がある方では、再発防止のために尿酸値を6.0mg/dl以下にすることが望ましいと言えます。
2.2高尿酸血症の合併症
高尿酸血症を放置すると尿酸が結晶化し、様々な症状を引き起こします。
①痛風発作
血中の尿酸値が飽和状態となり関節内に尿酸が漏れ出して結晶ができるために激しい痛みを生じます。
②痛風結節
様々な関節、腱などの皮下組織に尿酸の結晶が蓄積し、その周囲に炎症が起きると結節と呼ばれるコブのようなものが形成されます。
③痛風腎
腎臓の中に尿酸が蓄積すると腎臓の機能低下を起こし、進行すれば腎不全になり命を脅かす可能性もあります。
④尿路結石
尿酸値が高いと結石を生じやすくなり、尿路結石を併発しやすい傾向にあります。
⑤その他の合併症
高尿酸血症をお持ちの方は、高血圧、脂質異常症、糖尿病などにも罹患しているケースが多いことが分かっています。
3高尿酸血症・痛風の検査
3.1血液検査
血液検査では、尿酸値と炎症反応を測定します。尿酸値7.0mg/dl以上が治療開始の目安となり、痛風発作では炎症反応が上昇します。
3.2尿酸クリアランス・クレアチニンクリアランス検査
腎機能低下の指標となる検査であり、腎臓に尿酸が蓄積しているかどうかを調べます。
3.3尿検査
痛風の場合、尿が酸性になるため、尿のpHを調べます。
3.4CT検査
尿酸が腎臓に蓄積していると疑われる場合や尿管結石などの有無を調べます。
3.5合併症に対する検査
全身の状態を観察し、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの疑わしい疾患について詳しい検査を行います。
4.高尿酸血症の治療
高尿酸血症では、生活習慣や食事改善、薬による治療などが行われます。
4.1食事療法
①プリン体の多い食品を控える
魚の干物やタラコなどの魚卵、肉ではレバーなどにプリン体が多く含まれますので、食べ過ぎには注意が必要です。
また、肥満になると体内でプリン体が多く作られ、さらに排泄されにくい状態になる傾向があり、適正体重を心がけるようバランスの良い食事を心がけることが重要です。
②アルカリ性食品をとる
尿が酸性に傾くと、尿酸が溶けにくくなり、尿路結石ができやすくなります。野菜、海藻、果物などのアルカリ食品を積極的に取り入れることを心がけてください。
③飲酒は適量を
プリン体の多いビールを控えることは必須ですが、ビール以外のアルコールも控えることが望ましいと言えます。
多量飲酒によって、体は脱水状態になるため、尿酸が排出しにくくなります。また、飲み過ぎは肥満にも繋がりますので適量を心がけてください。
④水分摂取
尿酸は尿とともに排出されますので、尿量が増えれば、尿酸の排出が促されます。 水は、1日2リットル以上飲むことが理想です。
4.2薬物治療
高尿酸血症の治療薬は大きく3つのタイプがありますので、症状に応じた薬を服用します。
①治療薬の種類
- 尿酸産生抑制薬:体内で尿酸が生成されることを抑え、尿酸値を下げます。
- 尿酸排泄促進薬:尿酸の排泄を促し、尿酸値を下げます。
- 酸性尿を改善する薬:尿酸の排出を促しアルカリ尿にする薬。
②薬物治療の基準
これらの薬物治療の選択は、尿酸値と合併症の有無が基準となり、直ちに薬物療法が必要となるケースは、下記の通りです。
- 尿酸値が7.0mg/dl以上で痛風発作または痛風結節を認める場合。
- 尿酸値が8.0mg/dl以上で腎障害、尿路結石、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症がある場合。
- 尿酸値が9.0mg/dl以上の場合。(合併症がない場合も薬物治療が必要)
高尿酸血症、痛風は、食事療法によって大きく改善され、薬物療法が不要となるケースもあります。薬物療法を行う場合でも食事療法は並行して行うことが重要です。
5.診療費
当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担の場合)
尿検査のみ | 2000円前後 |
---|---|
エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
尿流量動態検査 | 1500円 |
膀胱鏡検査 | 3000円 |
胃カメラ | 4000円前後 |
大腸カメラ | 5000円前後 |
※3割負担の場合
新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、患者様全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーに配慮した診療を行っております。経験豊かな専門医が患者様に寄り添う診察を心がけておりますので、足の指や関節が痛む、ご家族に痛風の既往歴がある、健康診断で高尿酸血症を指摘されたという方は、お気軽に新橋消化器内科・泌尿器科クリニックまでご相談ください。
日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。