血精液症(精子・精液に血液が混じる)の原因・検査・治療について
精液や精子に血が混じっているのを見ると、男性は大変驚かれると思います。
おそらくほとんどの方が人生ではじめての経験なのではないかと思います。
この血精液症を経験された方はどこのクリニックや病院に行ったらいいかきっと困惑することでしょう。
この記事では、泌尿器科専門医が血精液症について分かりやすく説明させていただきます。
皆様の血精液症の理解の助けになると幸いです。
1 血精液症とは
血精液症とは、精液・精子に血液が混じることを言います。
基本的には他の症状はありませんが、まれに射精時に痛みを生じることがあります。
精液・精子に血液が混じるときは、精液や精子の通り道に悪性腫瘍や感染症を起こしている場合があります。
放置をすることで病気が進行してしまう恐れがあるため、血精液症を発見した場合には早めに詳しい検査を受けることをお勧めします。
実は血精液症があっても、ほとんどの方に大きな異常があることはなく、自然に治る事がほとんどです。
ですが、精液や精子に血液が混じる事は、身体からの何かしらのサインの場合もありますので、もし血精液症を自覚した方は、放置せず、泌尿器科のクリニックや病院を必ず受診しましょう。
2 血精液症の原因について
2.1 前立腺がん
前立腺がんは、日本人男性で最もかかる方の数が多く、今非常に増えてきている癌です。
増えている原因としては、食の欧米化と、日本人の高齢化、PSA検診の普及です。
前立腺がんは健診や人間ドックなどでPSA検査をして初めて見つかる事が多いです。
治療は手術や放射線治療などになります。
手術治療は、身体への負担が少ないロボット手術が有名です。
また、前立腺がんの治療の特徴としては、PSA値を定期的に調べ、その数値の経過を見ていく「PSA監視療法」という治療もあります。
前立腺は、精液の一部である前立腺液を作りますので、前立腺に癌がある場合は、前立腺液に出血して精液に出血が見られることがあります。
前立腺がんは早期発見、早期治療が非常に大切になってきます。
50歳以上の方で血精液症があると前立腺がんの可能性もあります。
血精液症に気づいた方は必ず泌尿器科クリニックを受診しましょう。
2.2 精巣がん
精巣は精子を作る臓器です。
精巣に癌ができると、癌細胞は正常な細胞とは違い非常に脆いので、出血しやすいという特徴があります。
このような理由から精巣がんでは精子の中に出血をすることがあります。
精巣がんは10代~20代の男性に多く、治療は手術治療が必要になります。
手術後、放射線治療や化学療法を行うこともあります。
精巣がんは早期発見・早期治療が非常に大切になってきます。
血精液症があり、精巣・陰嚢が腫れていると感じた方は必ず泌尿器科クリニックを受診しましょう。
2.3 急性精巣上体炎
急性精巣上体炎は、尿の通り道から精巣に細菌が感染をして精巣が腫れたり、精巣に痛みが出てくる病気です。
精巣に感染が起きるため、精巣の中に出血が起き、精子にも出血してしまいます。
急性精巣上体炎の治療は抗生剤の投与になります。
急性精巣上体炎の症状は強く、精巣が腫れて痛みが出たり、発熱、倦怠感などが出ます。
自覚症状が何もないという方はほとんどいないため、泌尿器科クリニックを受診する場合がほとんどです。
急性精巣上体炎は放っておくことで、精子を作る機能がなくなってしまう場合もあります。
精巣の痛みや腫れ、発熱に気づいた方は必ず泌尿器科クリニックを受診しましょう。
2.4 前立腺炎
前立腺は精液の一部である前立腺液を作る臓器です。
前立腺に感染が起き、血管が拡張すると血管の壁が弱くなり、微細な血管から出血してしまう事があります。
その場合、前立腺液にも出血が見られ、精液に出血が見られます。
前立腺炎は尿道を介して細菌が前立腺に感染することで起こります。
症状は発熱や排尿時痛や頻尿や残尿感です。
前立腺炎の治療は抗生物質の投与になります。
前立腺炎は激しい発熱を伴うこともあり、治療が遅れると入院治療が必要になってくる場合もあります。
発熱や排尿時痛、頻尿などを感じた方は必ず泌尿器科のクリニックを受診しましょう。
2.5 精嚢炎
精嚢は前立腺と膀胱の間に存在する臓器で、精液の一部である精嚢液を作る働きがあります。
精嚢炎は精嚢に細菌感染が起きることで引き起こされる炎症を言います。
しかし、特に感染等があるわけではなく、原因不明で起きる炎症が原因で、精嚢内に出血を起こす事があります。精嚢内に出血があることで精嚢液にも出血が起こり、精液にも出血が見られます。
精嚢炎の診断は、超音波検査やCT検査ではなかなか難しく、MRI検査が必要となってきます。
2.6 原因不明
上記の病気のいずれでもない、もしくは検査で出血がわからない場合も多くあります。
その場合は出血が自然に治まれば、そのまま経過観察としています。
それでも出血が長く続く場合は、尿検査やCT、MRI、超音波の検査で悪性疾患が現れてこないかを定期的に確認していかなければいけません。
基本的に、出血するということは身体からの何かしらのサインであることが多く、楽観視してはいけません。
3 血精液症の検査
3.1 尿検査
尿検査では、尿の中に細菌やがん細胞がないか、炎症の兆候である白血球、または赤血球(出血)がないかを確認します。
尿検査は泌尿器科ではとても重要な検査です。
3.2 採血検査
採血検査は前立腺がんのマーカーであるPSAの値が上昇していないか、炎症所見(白血球、CRP)が上昇していないかなどを確認します。
採血検査でも様々な情報が得られるため、血精液症の診断にはとても大切な検査となっています。
3.3 超音波検査
超音波検査では、前立腺や膀胱、精巣、精嚢などの観察ができます。
超音波検査は身体に害がなく、検査も短時間で、分かる情報量がとても多いので、非常に有用な検査となっております。
当院でも超音波検査を行っております。
詳しくは当院医師スタッフまでお尋ねください。
3.4 CT検査
CT検査は、血精液症の検査で積極的に行われる検査ではありませんが、尿管結石や膀胱の腫瘍を疑った際にはCT検査を行います。
CT検査は多少の放射線被曝はありますが、得られる情報がとても多く、医療の現場ではとても優秀な検査です。
当院でもCT検査を行っております。
詳しくは当院医師、スタッフまでお尋ねください。
3.5 MRI検査
MRI検査は、前立腺や精嚢、膀胱、精巣の詳細な観察ができます。
磁場を使った検査ですので、体に害はありません。
前立腺がんや精嚢がんなどを疑った場合はMRI検査を行うことがあります。
MRI検査は癌などの病気と正常な組織とのコントラストを画像上で判別しやすいという利点があります。
当院ではMRI検査を行っておりませんが、もしMRI検査が必要だと判断した場合は、適切なクリニックや病院を紹介させていただいております。
詳しくは当院医師、スタッフまでお尋ねください。
4 血精液症の治療・経過
前立腺がんであれば前立腺がんの治療、精巣がんであれば精巣がんの治療、感染症であれば感染症の治療を行います。
精嚢炎であれば自然に収まるのを待つこともあります。
精液に出血が続く場合は定期的に癌や新たな病気が出現してこないかを、尿検査や画像の検査で経過観察していきます。
5 血精液症を放っておくと
もしも、前立腺がんや精巣がんがあった場合は、初期には自覚症状が少なく、放置しておくことで癌が進行してしまいます。
癌が進行すると大きな手術が必要になったり、命に関わる場合もあります。
感染症であれば痛みや発熱など自覚症状が強いため、あまり放っておく方はおられませんが、治療が数日遅れることで、入院が必要になることもあります。
6 血精液症に気付いたら
血精液症に気づかれたら、必ず近くの泌尿器科のクリニックや病院を受診しましょう。
そのうち治るだろうと様子をみるのではなく、受診して検査をすることで、早期発見、早期治療に繋がります。新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、血精液症の適切な検査、診断、治療が可能です。
当院では待合室にパーテーションを設け、ご来院する方のプライバシーに配慮しています。
血精液症に気づいた方は、お気軽に当院医師、スタッフまでご相談ください。
7 診療費用
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
尿流量動態検査 | 1500円 |
膀胱鏡検査 | 3000円 |
胃カメラ | 4000円前後 |
大腸カメラ | 5000円前後 |
※3割負担の場合
日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。