性病の検査・原因・治療〜かかる費用や保険適用について
性病(性行為感染症)と聞くと、怖い病気を想像する方が多いのではないでしょうか。
思い当たる症状があったり、パートナーに性病の可能性があると言われたりと、この記事を見ている方の背景は様々だと思います。
当院では基本的に症状がある方や、パートナーが性病を疑う場合には、ご本人の検査や治療は保険適用(保険適応)で行っております。
性病(性行為感染症)の最新のガイドラインに基づいて、性病の症状や検査、費用等含めて詳しく説明させていただいておりますので、この記事を参考にしていただけると幸いです。
1 性病(性行為感染症)とは
性病(性行為感染症)とは、性行為によって起こる様々な感染症です。
性行為とは陰部だけではなく、口を使うオーラルセックスも含みます。
性的な接触によって、病原菌が相手に感染することで起こる病気を性病と呼びます。
2 クラミジア
2.1 クラミジアの症状・原因
クラミジアは最も代表的な性病で、潜伏期間は1~2週間です。
他の性病を持っている方もクラミジアを合併している場合が非常に多いです。
クラミジアトラコマチスという細菌が感染することによって引き起こされる感染症です。
陰部を使った性行為やオーラルセックスで感染します。
症状としては、男性の場合は排尿時の違和感や痛み(稀に膿が出る場合もあります)、女性の場合は膣の違和感やオリモノの異常があります。
また、喉に感染した場合は、咽頭痛が起こります。
症状が出ることが一般的ですが、稀にクラミジアに感染していても無症状の場合もあります。
クラミジアを疑う場合、検査や治療は保険適用になります。
費用は下記の表をご覧ください。
2.2 クラミジアの検査
尿道の痛みがある場合は尿検査、膣に異常がある場合は膣の粘膜を綿棒で拭う検査、喉の痛みや違和感などの場合はうがい液を調べる検査になります。
採取した検体の中にクラミジアの細菌がいないかをPCR検査(遺伝子を増幅させて調べる検査)で確認します。
結果が出るまでに通常3~4日かかります。
2.3 クラミジアの治療
クラミジアが陽性の場合はアジスロマイシンという薬の内服になります。
アジスロマイシンが効かないクラミジア感染症の場合は、シタフロキサシン、ミノマイシンといった他の薬を使用していきます。
3 淋病
3.1 淋病の症状・原因
淋病は淋菌という細菌によって引き起こされる性病で、潜伏期間は1週間以内の場合が多いです。
クラミジアに次いで2番目に多い性病です。
症状は強く、男性が感染した場合は、尿道から膿が出たり、排尿時に強い痛みを生じます。
女性が感染した場合は、黄色いおりものが出たり、膣の強いかゆみや痛みを生じます。
また、喉に感染した場合には強い咽頭痛を生じます。
一方で、淋菌の場合も、感染していても稀に無症状の場合があります。
淋病を疑う場合の検査や治療も当院では保険適用で行っております。
費用は下記の診療費用をご覧ください。
3.2 淋病の検査
尿道に症状がある場合は尿検査、膣に症状がある場合は膣の粘膜を綿棒で拭う検査、喉の痛みや違和感などの場合は喉のうがい液の検査になります。
採取した検体の中に淋菌がいないかをPCR検査で確認します。
結果が出るまでに3~4日かかります。
3.3 淋病の治療
尿道や膣に淋菌の感染を疑った場合は、抗生物質を点滴するか、もしくはお尻へ筋肉注射をします。
喉への感染を疑った場合は抗生物質の点滴をします。
基本的に1回で治療は終了となります。
4 梅毒
4.1 梅毒の症状・原因
梅毒はこの20年間で急激に患者数が増えています。
2000年に比べると2023年現在では、新規の梅毒患者さんは20倍弱に増えています。
原因は海外からの観光客の増加ということが言われておりますが、詳細はまだ定かではありません。江戸時代には梅毒は不治の病と言われていましたが、現在では抗生物質でしっかり完治できる病気になっていますのでご安心ください。
梅毒の症状は、初期(第1期)は性接触後3~6週間後に現れてきます。
男性の場合は陰茎に、女性の場合は膣の周囲に痛みのない潰瘍(皮膚の表面が剥がれている状態)ができます。
その後、その潰瘍は消失してきますが、感染から3ヶ月以降(第2期)に全身に発疹(梅毒性バラ疹)が出てきます。
下に詳しい画像を載せておきますので、ご自分の症状(発疹)が梅毒かどうか心配な方はご参照ください。
その後、その発疹も治まり、感染から3年以降(第3.4期)になると神経や脳に梅毒が浸潤していき、死に至ってしまうという状態になります。
医療が発達している現代では、抗生物質が容易に手に入るため、2期までの患者様がほとんどです。
我々のクリニックグループでも、梅毒の患者様を3000人以上診ておりますが、梅毒で亡くなられる方はまだ1人もおられません。
梅毒の症状を疑った方は、心配せずに、安心してクリニックを受診してください。
しっかりと治療をすれば、完治が可能です。
また、稀に感染していても無症状の場合もあります。
健診や人間ドックなどで指摘されて初めて気づき、受診される方も多いです。
4.2 梅毒の検査
TPHA法 | PRP法 | |
---|---|---|
検査可能時期 | 感染機会から4週間以降 | 感染機会から2週間以降 |
特異度 | 梅毒のみに陽性 | 自己免疫疾患等でも陽性 |
抗体値 | 一度感染すると高値のまま | 治療後は下がる |
採血で梅毒の抗体を調べることができます。
梅毒抗体のTPHAとRPRと呼ばれる項目を測ります。
梅毒抗体は一般的に感染後、3~6週間でまずRPRが陽性となり、TPはやや遅れて陽性になります。
TPは生涯に渡り抗体として残るのが一般的ですので、RPRの数値の変動が、治療判定の基準となります。
感染により上昇していたRPRの値が、治療によってどのくらい減っていくか、経過を追って観察していきます。
下記にTPHA.RPRの梅毒の感染の判断基準を載せておきます。
ご参考にしてください。
4.3 梅毒の治療
ペニシリンという抗生物質の内服や注射で治療をします。
梅毒の1期2期の場合、基本的に1ヵ月間の内服、もしくは1回の注射で治療をします。
3期4期の梅毒になると抗生物質を2ヶ月間以上内服、もしくは3回の注射(週に1回の注射を計3回)が必要になってきます。
当院ではどちらの治療も保険適用内で可能です。
詳しくは当院医師、スタッフまでお尋ねください。
4.4 実際の梅毒の方の画像
5 尖圭コンジローマ
5.1 尖圭コンジローマの症状・原因
尖圭コンジローマは最も怖い性病のうちの1つです。
性行為によって、ヒトパピローマウィルスというウィルスが感染することによって起こります。
潜伏期間は8ヶ月~1年程度と言われています。
症状は、陰茎や膣周囲に鶏の鶏冠(とさか)状のできもの(腫瘤)が発生し、腫瘤は複数できることもあります。
痛みは伴いません。
治療によって思うように治らず、いろいろなクリニックを転々とされる方も多くいらっしゃいます。
その方の尖圭コンジローマの部位や数、大きさなどを考慮し、下記に述べるような適切な治療を選択することが大切です。
当院での尖圭コンジローマの検査や治療は保険適用となっております。
詳しくは下記の診療費用をご覧ください。
5.2 尖圭コンジローマの検査
尖圭コンジローマを疑う組織が付着している皮膚を電気メスで切除します。
切除したできものを顕微鏡で観察し、中に尖圭コンジローマに特有のコイロサイトーシスと呼ばれる組織が見られるかを確認して、確定診断とします。
検査結果は1~2週間ほどかかります。
尖圭コンジローマの部位や数によっては、電気メス治療が適さずに、検査できない場合もあります。
予めご了承ください。
5.3 尖圭コンジローマの治療
尖圭コンジローマの治療は、塗り薬、電気メスによる切除、液体窒素による治療、炭酸ガスレーザーによる治療など様々です。
基本的には、初期の尖圭コンジローマには塗り薬や電気メスが適しています。
電気メスや塗り薬での治療が適さなかったり、治療効果がなかった場合などは、液体窒素や炭酸ガスレーザーの治療に移ります。
当院では塗り薬と電気メスの治療を行っております。
詳しくは当院医師、スタッフまでお尋ねください。
液体窒素や炭酸ガスレーザーの治療が必要な場合には、適切な病院を紹介させていただいております。
また、尖圭コンジローマは再発率が高いのが特徴です。
5.4 尖圭コンジローマの実際の方の画像
尖圭コンジローマの症例写真①尖圭コンジローマの症例写真②尖圭コンジローマの症例写真③尖圭コンジローマの症例写真④
6 性器ヘルペス
6.1 性器ヘルペスの症状・原因
性器ヘルペスは、ヘルペスウィルスが性行為によって感染することで起こります。
口唇にヘルペスウィルスを持っている場合にはオーラルセックスでも感染します。
潜伏期間は1週間程度と言われており、陰部や口唇にびらん(皮膚が欠損した状態)ができ、強い痛みを生じます。
その後、びらんはかさぶたとなり、治癒していきます。
性器ヘルペスや口唇ヘルペスのウィルスを無症状で持っている方もたくさんいらっしゃいますが、その場合でも相手に感染させてしまう可能性があります。
当院では性器ヘルペスを疑う症状がある場合の検査や治療は保険適用となります。
費用は下記の診療費用をご覧ください。
6.2 性器ヘルペスの検査
患部を綿棒で拭って調べる抗原検査(15分ほどで結果が出ます)、もしくは採血検査にてヘルペスウィルスの抗体を調べます。
6.3 性器ヘルペスの治療
性器ヘルペスの治療は、内服薬、もしくは塗り薬の治療になります。
第一選択は内服薬で、もし治療が効かない場合は、塗り薬を使用する場合があります。
ヘルペスウィルスは症状がなくなった後でも体の中に残り、免疫力が下がった時に再発してしまいます。
そのため、免疫力を下げないように日々の生活習慣に気を付ける必要があります。
6.4 性器ヘルペスの方の実際の画像
7 その他の性病
7.1 マイコプラズマ尿道炎
マイコプラズマ尿道炎は、マイコプラズマという細菌が感染することで起こります。
潜伏期間は1週間~5週間ほどで、尿道の痛みや違和感を伴いますが無症状の場合もあります。
治療は内服薬の服用になります。
当院ではマイコプラズマ尿道炎を疑う場合の検査や治療は保険適用となります。
7.2 トリコモナス尿道炎
トリコモナス尿道炎は、トリコモナスという寄生虫が尿道に感染することで起きます。
潜伏期間は10日間前後で、尿道に違和感や痛みを生じます。
治療は抗寄生虫薬を10日間ほど内服します。
当院ではトリコモナス尿道炎を疑う場合の検査や治療は保険適用となります。
費用は詳しくは下記の診療費用をご覧ください。
7.3 ウレアプラズマ尿道炎
ウレアプラズマ尿道炎は、ウレアプラズマという細菌が尿道に感染して起こります。
潜伏期間は1週間~1ヵ月と言われております。
症状は、尿道の違和感や痛みで、治療は抗生物質の内服です。
ウレアプラズマの検査や治療は保険適用外となります。
自費の検査となりますので、ご承知の上でご来院ください。
7.4 HIV感染症
HIVとはヒト免疫不全ウィルスのことです。
性行為や血液を介して感染する性病であり、エイズ(後天性免疫不全症候群)を引き起こす可能性があります。
感染初期にはだるさや微熱など、風邪のような症状であるため、HIV感染に気付かない場合が多いのが現状です。
クラミジア、淋病、梅毒など他の性行為感染症を持っていると、粘膜が弱くなっているため、HIVにもかかりやすくなります。
クラミジアや淋菌、梅毒などが陽性で、HIV感染についても心配な方は、一度泌尿器科に相談してみてはいかがでしょうか。
HIV検査は当院では保険適応外となります。
自費の検査となりますので、ご承知の上でご来院ください。
8 性病を放置すると
性病を放置することで、パートナーに感染させてしまったり、他の性病にもかかりやすくなってしまいます。
梅毒やHIVに感染した場合、自然に治ることはありませんし、放置することで症状が進んでしまい、最悪の場合、命に関わることもあります。
また、男性、女性ともに不妊症の原因となる場合がありますので、放置することは非常に危険です。
9 性病かなと思ったら
性病(性行為感染症)はほとんどのケースで完治が可能です。
完治が難しいHIV感染症も薬により進行を遅らせることが可能です。
そのため、性病を疑った場合には早めの受診が大切です。
性病を疑う症状( 尿道の痛みや違和感、膿が出る、喉の違和感、性器のできもの、性器の潰瘍や痛みなど)があったら、必ず泌尿器科クリニックを受診しましょう。
全身に梅毒を疑う発疹が出た場合も、泌尿器科クリニックで対応が可能です。
新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、性病(性行為感染症)の適切な検査、診断、治療が可能です。
どんなことでも当院医師スタッフまでお尋ねください。
10 診療費用
梅毒の疑いによる受診の場合で、初診:3000円〜4000円前後となります。また、他の性感染症を併発している可能性もあるため他の性病検査を一緒に受ける場合には、検査の項目に応じて価格が変わります。詳しくは医師にご質問ください。
(※3割負担の場合)
クラミジア淋菌の検査・治療費用 | 3000円~4000円 | |
---|---|---|
梅毒の検査・治療費用 | 3000円~4000円 | |
尖圭コンジローマの検査・治療費用 | 薬治療 | 1000円~2000円 |
電気メスによる切除 | 4000円~6000円 | |
トリコモナスの検査治療費用 | 3000円~4000円 | |
マイコプラズマ・ウレアプラズマの検査費用 自費検査 | 9000円 | |
HIV感染症の検査費用 自費検査 |
4400円 | |
性器ヘルペスの検査・治療費用 | 3000~5000円 | |
淋病の検査・治療費用 | 3000~4000円 |
当院では、患者さん全員を番号でお呼びし、全席に仕切りを設けてプライバシーにに配慮した診療を行い、経験豊かな専門医が患者さんに寄り添う診察を心がけております。
陰部や体に痛みがない発疹がある、梅毒や性感染症について不安があるという方は、新橋消化器内科・泌尿器科クリニックにお気軽にご相談ください。
日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。