膀胱炎について(症状、原因、検査、治療、予防)
膀胱炎で悩んでいる女性は非常に多く、特に繰り返す膀胱炎は女性を非常に悩ませます。
このページでは膀胱炎の原因、検査、治療について、また膀胱炎を繰り返さないためにできることを泌尿器科専門医が分かりやすく解説していきます。
膀胱炎で悩む多くの女性の参考になれば幸いです。
1 膀胱とは
そもそも膀胱とは何をする臓器なのでしょうか。
膀胱は腎臓から作られた尿を貯めて尿道を通して体外に排出する臓器です。
膀胱には図のように尿管が左右2本と尿道が繋がっており、男性の場合、膀胱の下に尿道を取り囲むように前立腺が位置しています。
膀胱は一度に200cc~300ccほどの尿を溜められると、機能が正常と考えられています。
2 膀胱炎とは
膀胱炎とは膀胱で起きる炎症(身体の防御反応)のことを言います。
ここでいう炎症とは、膀胱の中の細菌に対して、人の免疫(白血球など)が反応することを指します。
一般的に膀胱炎の症状として、排尿時の痛み、頻尿(尿の回数が多くなる)、残尿感、血尿などが起こります。
膀胱炎で発熱が起こる事はほとんどありません。
また、男性が膀胱炎を起こすのは稀で、基本的に女性にしか起こりません。
その理由は、女性は尿道が短く、外部から膀胱に細菌が入りやすいからです。
男性は尿道が長いため、細菌が入ってきても尿で排出されやすく、膀胱炎にはなりにくいと言われています。
膀胱炎にはいくつか種類があって、その原因も違います。下記でそちらを説明していきます。
3 膀胱炎の種類とその原因
3.1単純性膀胱炎
単純性膀胱炎は、いわゆる一般的な膀胱炎と言われるものです。
体の外から尿道、そして膀胱に細菌が入り、膀胱内で細菌が増殖し、単純性膀胱炎を起こします。
単純性膀胱炎になる原因としては、下記の3つが挙げられます。
- おしっこを我慢すること
- 水分をあまり摂取しないこと
- 陰部を不潔にする事
つまり、膀胱の中で、尿の細菌の濃度を濃くしなければ(薄くすれば)、膀胱炎にはなりづらくなります。
そのため、水分摂取、尿意を催したらすぐにトイレに行く、陰部を清潔にすることなどが大切になってきます。
3.2複雑性膀胱炎
複雑性膀胱炎とは何かしら大元の病気があって、それに付随して膀胱炎が起こることを指します。
ですので、複雑性膀胱炎の治療はまずその大元の病気を取り除くことが必要です。
その上で、抗生物質の投与を行います。
複雑性膀胱炎の原因を探すには、超音波検査や尿検査、膀胱鏡検査がとても大切になってきます。
3.2.1複雑性膀胱炎の原因
尿管結石、膀胱結石
腎臓でできた尿管結石(尿路結石)が膀胱の近くまで降りてきている時や、膀胱内に結石があるとその結石に細菌が付着して膀胱炎を引き起こしやすくなります。
ですので、この場合の膀胱炎は尿管結石や膀胱結石を取り除く治療をすることが必要です。
3.2.2膀胱がん
膀胱がんがあることで、細菌が膀胱がんに付着して膀胱炎を引き起こすことがあります。
膀胱がんを取り除き、抗生剤の投与が必要になります。
膀胱尿管逆流症
排尿時に、膀胱から尿管に尿が逆流することで、膀胱炎や腎盂腎炎を引き起こしやすくなります。
10歳以下の子供に多く、自然経過で良くなりますが、手術が必要な場合もあります。
膀胱憩室症
膀胱憩室といって、膀胱の中に小部屋があることで、そこから尿がうまく排出されず、そこに細菌が溜まって炎症を起こし、膀胱炎を引き起こしやすくなります。
尿道カテーテル留置中
尿道カテーテルを入れていることで、尿道カテーテル内に細菌が繁殖しやすく、膀胱内にも細菌が入りやすい状態となり、膀胱炎を引き起こすことがあります。
尿道カテーテルを入れている方については定期的に新しいカテーテルに交換することが必要です。
3.3.間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、細菌によって引き起こされるものではなく、自分の免疫が膀胱を攻撃してしまうことで起こります。
症状としては、頻尿や残尿感、排尿時の痛み、血尿がありますが、下腹部の痛みが強く出る事が特徴的です。
間質性膀胱炎の原因となる生活習慣等は特になく、間質性膀胱炎の原因はまだ明らかになっていません。
3.4再発性膀胱炎
再発性膀胱炎は単純性膀胱炎を繰り返してしまうことを言います。
尿管結石や膀胱がんなど特に原因がなく、膀胱炎を繰り返してしまうため、本人にとっては非常にストレスになります。
膀胱炎を繰り返す再発性膀胱炎の診断のためには、大きな病気が隠れていないか調べるために、超音波検査や膀胱鏡検査が大切となってきます。
4 膀胱炎の検査
4.1尿検査
尿検査は、泌尿器科ではとても大切な検査です。
膀胱炎では尿の中に白血球(炎症反応)や赤血球(出血) が混ざってきます。
また膀胱炎を起こしている原因の細菌の種類も尿検査で判断できます。
4.2 超音波検査
超音波検査は身体にダメージがなく、詳細に膀胱や尿管等のことが分かるとても有用な検査です。
膀胱結石がないか、膀胱がんがないか、尿管結石がないかなどが超音波検査で分かります。
当院でも超音波検査を行っております。
詳しくは当院医師スタッフまでお尋ねください。
4.3 採血検査
採血検査では体の中の炎症反応(白血球、CRP)が上昇していないかの確認をします。
また腎臓の機能が正常に保たれているかどうかも採血検査で分かります。
4.4 膀胱鏡検査
膀胱鏡検査は、複雑性膀胱炎や間質性膀胱炎の診断にはとても大切になってきます。
直接カメラで膀胱内を観察できるため、確定診断に繋がります。
当院では軟性膀胱鏡といって、尿道に入れるファイバーが軟らかく、尿道にダメージが少ない膀胱鏡を使用しており、検査時間も3分程度と患者様に負担の少ない検査を心がけています。
詳しくは当院医師スタッフまでお尋ねください。
5 膀胱炎の治療
5.1 単純性膀胱炎の治療
単純性膀胱炎の治療は抗生物質の投与になります。3日間~5日間ほど抗生物質を投与します。
合わせて漢方薬を併用する場合もありますが、治療により1週間以内で症状は治まります。
それでも症状が続く場合は、その方の膀胱炎の原因となっていると判断した細菌に対して、処方した抗生物質が効いていない可能性がありますので、その際は薬の変更が必要になります。
5.2 複雑性膀胱炎の治療
複雑性膀胱炎の治療は、先述の通り、尿管結石や膀胱結石や膀胱がんなどの原因の病気を取り除き、抗生物質の投与が必要になってきます。
5.3 間質性膀胱炎の治療
間質性膀胱炎の治療は、膀胱内に薬剤を注入するか、膀胱水圧を拡張する手術を行います。
当院で間質性膀胱炎の治療は行っておりません。
当院で間質性膀胱炎と診断した際は適切な病院に紹介させていただいております。
5.4 再発性膀胱炎の治療
再発性膀胱炎の治療は基本的には抗生物質の投与になります。
膀胱炎が治った後に、生活習慣を見直していただきます。
十分な水分摂取をすること、おしっこに行きたくなったらトイレに行くこと、陰部を清潔にすることなどを徹底していただき、それでもまた膀胱炎が再発してしまう場合は、漢方薬の服用が効果的です。
毎日漢方薬を飲むことで、膀胱の血流を改善して免疫を高め、膀胱炎になりにくい体になっていきます。
6 膀胱炎を繰り返さないために
「十分な水分を摂取すること」「排尿したくなったらトイレに行くこと」「陰部を清潔に保つこと」これを徹底しましょう。
それでもまた膀胱炎になってしまう場合は、必ず泌尿器科専門医を受診して相談しましょう。
7. 膀胱炎の例 56歳女性
2か月に1回、膀胱炎を繰り返すということで当院泌尿器科を受診。
超音波検査や膀胱鏡検査では大きな病気は見つからず、再発性膀胱炎と診断。
水分摂取などの生活習慣も徹底されているとのことで、毎日漢方薬の内服をしていただいた。
内服後1年経過するも膀胱炎の再発を認めない。
8.膀胱炎かなと思ったら
膀胱炎かなと思う症状があったら、必ず泌尿器科クリニックを受診しましょう。
膀胱炎を放置することで、腎盂腎炎(腎臓まで感染が広がること)になったり、膀胱の機能が低下してしまったりすることもあります。
頻尿や残尿感、排尿時痛、血尿がある場合は、必ず泌尿器科のクリニックや病院を受診しましょう。
新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは膀胱炎の検査、診断、治療が可能です。
お気軽に当院医師スタッフまでお尋ねください。
9. 診療費用
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
尿流量動態検査 | 1500円 |
膀胱鏡検査 | 3000円 |
胃カメラ | 4000円前後 |
大腸カメラ | 5000円前後 |
※3割負担の場合

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。