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がん検診を受けていても安心とは限らない理由 〜見逃しが起こる仕組みと、正しく活かすための考え方 〜

[2026.02.14]

はじめに

がん検診は、早期発見・早期治療につながる大切な取り組みです。しかし、「検診を受けているから大丈夫」と考えてしまうことには注意が必要です。
検診には必ず“限界”があり、一定割合で見逃しが起こることが医学的にも知られています。これは医療の質の問題ではなく、検査という仕組みそのものの特性によるものなのです。

検診の目的は「個人のがんを100%見つけること」ではない

多くの公的ながん検診は、限られた医療資源の中で多数の人を対象に実施されます。その主な目的は、集団全体の死亡率を下げることです。そのため、短時間・低侵襲・低コストで実施できる検査が採用されており、精密検査と同じ精度を最初から求めているわけではありません。

検診は「診断」ではなく、あくまで『スクリーニング(ふるい分け)』です。この性質を理解することが重要です。

 

見逃しが起こる最大の理由は「検査の感度」にある

検査には必ず「感度(かんど)」という指標があります。
感度とは、病気がある人をどれだけ正しく「陽性」と判定できるかを示す割合です。

感度が80%の検査であれば、100人の患者さんのうち20人は検査で拾い上げられない可能性があります。
つまり、どんな検査でも感度が100%でない限り、理論上“見逃し”は必ず発生します。

 

具体例①:大腸がん検診(便潜血検査)

便潜血検査は、便に微量の血液が混じっているかを調べる検査です。
この方法は簡便で広く行われていますが、

  • 早期がんでは出血しないことがある
  • 出血があっても毎回便に混じるとは限らない
  • 病変が小さいほど検出されにくい

といった理由から、早期大腸がんに対する感度は約30〜50%程度と報告されています。

一方で、大腸内視鏡検査では病変を直接観察できるため、検出率は90%以上まで上昇します。
つまり、便潜血検査は「入り口の検査」であり、陰性でも癌が否定されるわけではありません。

 


具体例②:乳がん検診(マンモグラフィ)

マンモグラフィは乳房を機械で挟み、X線で撮影する検査ですが、

  • 乳腺が密な若年層では腫瘤が背景に埋もれる
  • 小さな病変は画像上区別しにくい
  • 構造的に見えにくい部位がある

といった理由から、感度は50〜70%程度とされています。

しかし、超音波検査(乳腺エコー)を併用すると、異なる原理で観察できるため、両者を組み合わせることで検出率は90%前後まで向上すると考えられています。

具体例③:肺がん検診(胸部X線)

胸部X線は1枚の平面的な画像で評価するため、

  • 心臓や血管、骨と病変が重なってしまう
  • 小さな腫瘍は識別困難
  • 読影者の経験にも影響される

といった制約があります。

そのため感度はおよそ70%前後とされ、CT検査のように断層画像で評価する方法では85〜95%程度まで改善します。

具体例④:胃がん検診(バリウム検査)

バリウム検査はX線を用い、胃の形態変化から異常を推測する間接的な検査です。

  • 粘膜表面の微細な変化は描出しにくい
  • 早期がんでは形の変化が乏しい
  • 異常が疑われても最終診断には内視鏡が必要

このため、感度は60〜80%程度とされ、胃カメラでは直接観察・組織生検が可能なため、診断精度が大きく向上します。

検診で最も危険なのは「安心してしまうこと」

検診の本当の役割は、異常が疑われる人を拾い上げ、精密検査につなげることです。

ところが実際には、

  • 要精査と言われても受診しない
  • 異常なしだからといって、わずかな初期症状を放置する
  • 毎年受けているという安心感が判断を遅らせる

といった行動が、発見の遅れにつながることがあります。

がん検診を本当に役立てるために大切なこと

がん検診は「癌がないことを証明する検査」ではなく、あくまで病気の可能性がある人を見つけ出すための“入口の検査”です。検査には必ず限界があり、結果が「異常なし」でも、今回の方法では異常が見つからなかったという意味に過ぎません。そのため、検診を受けたこと自体で安心しきってしまうのではなく、継続して体調の変化に注意し、必要に応じて次の検査につなげる意識が重要になります。

また、検診で「要精査」と判定された場合は、必ず精密検査を受けることが大切です。要精査とは、癌が確定したということではなく、より詳しく調べて本当に異常がないかを確認する段階です。この確認を行わなければ、検診を受けた意味がなくなってしまいます。

さらに、血便持続する痛み体重減少などの症状がある場合は、検診結果に関係なく医療機関を受診する必要があります。検診は症状のない人を対象とした仕組みであり、症状が出ている場合は診断のための検査を受けるべき段階だからです。

がん検診は「受けること」そのものが目的ではありません。結果を正しく理解し、必要な行動につなげてこそ、本当の意味で健康を守ることにつながります。

まとめ

がん検診は確実性100%の検査ではありません。
しかし、適切に理解し、必要な検査へとつなげれば、命を守る非常に有効な手段になります。

「受けたから安心」ではなく、受けた後の行動こそが最も重要です。

検診をきっかけに、自分の体と向き合い、必要な検査を適切に選択していくことが、早期発見への最短の道となります。

新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは消化器内科、泌尿器科の両面で幅広い範囲で診療を行っております。
胃カメラ大腸カメラは患者様の苦痛を最小限に抑えるため「眠ったままの検査」を行い、必要に応じCT検査を組み合わせて確実な診断に結びつけています。

「検診で精密検査になった」「何年も前から精密検査を放置している」など、受診を先延ばししている方は、ぜひ新橋消化器内科・泌尿器科クリニックにご相談ください。
土曜日・日曜日も診療しておりますので、この機会にご自身の身体を見直してみませんか?


この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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