メニュー

夜中のトイレ、原因は膀胱じゃない?夜間頻尿の約67%にみられた「夜間多尿」とは!?

[2026.08.10]

はじめに

2026年6月、夜間頻尿について興味深い研究結果が発表されました。

日本の17医療機関を受診した875人の排尿記録を年齢別に詳しく調べたところ、年齢が高いほど、1日の尿のうち夜間に排泄される割合が高くなる傾向が示されたのです。

夜間頻尿というと、膀胱の機能低下や前立腺肥大症を思い浮かべる方も多いと思います。しかし実際には、夜につくられる尿そのものが多い「夜間多尿」が関係している場合があります。

今回は、この最新研究をきっかけに、夜間頻尿と夜間多尿についてわかりやすく解説します。夜間頻尿にお悩みの方の参考になれば幸いです。

夜間頻尿とは

夜間頻尿とは、夜間に排尿のために1回以上起きる状態をいいます。ただし、夜中に1回トイレへ行くだけで、すぐに治療が必要というわけではありません。

問題になるのは、夜中に何度も目が覚めることで睡眠が妨げられたり、日中の眠気や疲労感につながったりする場合です。高齢の方では、夜間に何度も移動することによる転倒による怪我にも注意が必要になります。

夜間頻尿は軽く考えられがちな症状ですが、毎晩続くとなれば、ご本人にとっては生活の質にかかわる大きな問題となります。

夜間頻尿は「膀胱の問題」とは限りません

夜間頻尿の原因として、過活動膀胱前立腺肥大症などが関係することはもちろんあります。
しかし、もう一つ重要なのが「夜間多尿」です。

夜間多尿とは、1日に出る尿のうち、夜間に出る尿の割合が多くなっている状態です。この割合を「夜間多尿指数」といい、高齢者では夜間の尿量が1日の尿量の33%以上になることが、一つの目安とされています。 若い方では基準が異なるため、33%という数字がすべての年代に共通するわけではありません。

 

たとえば、同じように夜中に3回トイレへ行っていても、毎回少量しか尿が出ない方と、毎回200~300mLほどしっかり出る方では、原因が同じとは限りません。前者では膀胱に尿をためにくくなっていることが考えられますが、後者では夜間につくられる尿そのものが多い可能性があります。

そのため夜間頻尿では、「何回起きたか」だけでなく、「夜にどのくらい尿が出ているか」を見ることが大切です。

夜間頻尿の67.4%に「夜間多尿」

今回の2026年の研究につながる重要な報告が、2023年に発表されています。

日本の17医療機関で夜間頻尿を主な訴えとして受診した875人を調べたところ、590人、67.4%に夜間多尿が認められました。 男性では66.6%、女性では70.0%で、研究対象となった患者さんのおよそ3人に2人に夜間多尿がみられたことになります。

さらに年齢別にみると、夜間多尿の割合は50歳未満では38.1%だったのに対し、50代では55.3%、60代では56.7%、70代では66.5%、80歳以上では79.3%でした。つまり、高齢になるほど夜間多尿が多くなる傾向が、すでにこの研究で確認されていました。

そこで2026年の研究では、同じ875人の排尿記録を年齢別にさらに詳しく解析し、昼間と夜間で尿の出方がどう違うのかを調べました。その結果、年齢が高い人ほど夜間に尿が偏る傾向が確認され、特に高齢者の夜間頻尿は、膀胱機能の低下だけでは説明できない可能性が示されています。

なぜ夜に尿が増えるのでしょうか

私たちの身体には、夜間の尿量を抑える仕組みがあります。その一つが、尿をつくる量を調節する「抗利尿ホルモン(バソプレシン)」です。

通常、このホルモンは夜間に尿量を減らす方向に働きますが、年齢とともに昼夜の分泌リズムが変化し、夜間にも尿がつくられやすくなることがあります。これは必ずしも「ホルモンの異常」というわけではなく、加齢に伴ってみられる身体の変化の一つです。

ただし、夜間多尿はこの仕組みだけで起こるものではありません。高血圧や心臓・腎臓の病気、睡眠時無呼吸症候群、水分・塩分摂取、服用している薬など、さまざまな要因が関係します。

なかでも足のむくみがある方では、日中に下半身にたまった水分が、夜に横になることで血液循環へ戻り、腎臓で処理されて尿として排泄されることがあります。そのため、寝る前にそれほど水分を摂っていなくても、夜間の尿量が増えることがあります。

「水分を減らせばいい」とは限りません

夜間頻尿があると、寝る前の水分をできるだけ減らそうとする方もいます。確かに、水分を多く摂っている場合には、摂取量や時間帯を見直すことで改善することがあります。

しかし、夜間多尿の背景にむくみや睡眠、全身の病気などが関係している場合には、水分を減らすだけでは十分な改善につながりません。また、必要以上の水分制限は脱水につながることもあるため、特に高齢の方や暑い時期には注意が必要です。

大切なのは、夜間頻尿があるから一律に水分を減らすことではなく、なぜ夜に尿が増えているのかを確認したうえで、その原因に合った対策を考えることです。

夜間頻尿のパターンを知る「排尿日誌」

夜間頻尿の原因を調べる際に役立つのが「排尿日誌」です。数日間、トイレへ行った時間と1回ごとの尿量を記録することで、昼間と夜間の排尿パターンを確認できます。

夜中に3回起きていても、1回あたりの尿量が少ないのか、それとも毎回多くの尿が出ているのかでは考えるべき原因が異なります。さらに、昼間も頻尿なのか、夜間だけ尿量が増えているのかを知ることで、その方の夜間頻尿の特徴がより見えやすくなります。

夜間頻尿には、夜間多尿、過活動膀胱前立腺肥大症睡眠の問題などさまざまな原因があり、いくつかの要因が重なっていることも珍しくありません。まず夜間頻尿のパターンを把握することが、その方に合った治療を考える第一歩になります。

おわりに

夜間頻尿は、年齢とともに増えることもあり、つい「仕方がないもの」と軽く考えられがちです。しかし、毎晩何度も目が覚めることは、ご本人にとって睡眠や日中の生活にも影響する大きな問題です。

大切なのは、まずご自身の夜間頻尿がどのようなパターンで起きているのかを知ることです。
夜間多尿なのか、膀胱の問題なのか、あるいはいくつかの要因が重なっているのかを確認することで、適切な対策や治療につながります。

夜間頻尿を「年齢のせい」と諦めず、より良い睡眠とQOLの向上を目指して、私たち泌尿器科医と一緒に取り組んでいきましょう。

 

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
Yahoo!ニュース エキスパートとして情報発信
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

参考文献

Iinuma K, et al. The prevalence and predictive factors of nocturnal polyuria in Japanese patients with nocturia: a multicentral retrospective cohort study. Scientific Reports. 2023.

Kawase K, et al. Age and Nocturnal Polyuria in Nocturia: A Multicenter Voiding Diary Cohort Study. Neurourology and Urodynamics. 2026.

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME