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うがい薬、本当に必要? 正しい知識と代替法について考える

[2025.04.14]

はじめに

「うがいをして⾵邪予防をしましょう」誰もが⼀度は聞いたことのあるフレー ズではないでしょうか。特に⽇本では新型コロナはもちろん、⾵邪やインフル エンザの季節になると、うがい薬を⽤いて喉のケアをする習慣が根強くありますね。ドラッグストアにはさまざまな種類のうがい薬が並び、⾵邪予防や⼝ 腔内の殺菌に効果があるとされ、多くの⽅に利⽤されています。

しかし、うがい薬の使⽤には注意すべき点があり、万能薬のように使うのはかえって逆効果になることもあるのです。うがい薬を正しく理解し、そのリスクや適切な代替⼿段について知ることは、⽇々の健康管理にとって⾮常に重要です。

この記事では、うがい薬の基本的な知識から、避けたほうが良い理由、そして代替策までを詳しくご紹介します。

 

1 うがい薬とは

うがい薬とは、⼝腔内や喉を清潔に保つことを⽬的として使われる液体の薬剤で、殺菌・消毒・抗炎症作⽤などを持つ成分が配合されています。⼀般的に市販されているうがい薬には、主な成分として下記のような成分が含まれています。


1-1 ポビドンヨード

最も広く知られている成分で、ヨウ素(ヨード)を含み、ウイルスや細菌に対して強い殺菌作⽤があります。液体は茶⾊く、代表的な商品に「イソジンうがい薬」などがあります。


1-2 クロルヘキシジン

⼝腔内の消毒に使われる成分で、⻭科領域でも⻭周病予防などに使われることがあります。液体の⾊はほぼ無⾊です。


1-3 アズレンスルホン酸ナトリウム

抗炎症作⽤があり、喉の腫れや炎症を抑える⽬的で配合されることが多い成分です。⽐較的刺激が少なく、喉のイガイガに⽤いられることもあります。液体 の⾊はやや薄めの⻘紫⾊です。

これらの成分は⼀⾒すると頼もしく感じられますが、使い⽅を間違えると、かえって健康を損なう恐れもあります。

2 うがい薬を避けるべき理由

うがい薬は常に「安全で有効」とは限りません。以下のような理由から、特に⽇常的に多⽤することは注意が必要です。


2-1 ヨウ素(ヨード)による甲状腺への影響

ポビドンヨードに含まれるヨウ素(ヨード)は、⻑期間⼤量に体内に取り込まれると、甲状腺機能に影響を及ぼす可能性があります。甲状腺は体の代謝をコ ントロールする重要な臓器であり、甲状腺機能の乱れは疲労感、体重増加、気 分の落ち込みなど多様な症状を引き起こします。特に妊婦さんや甲状腺疾患の既往がある⽅はヨウ素(ヨード)を使⽤した頻回のうがいには注意が必要です。

2-2 ⻭のエナメル質への影響

うがい薬にはエナメル質を溶かしてしまうような作⽤は基本的にはありませ ん。しかし、柑橘類、炭酸飲料などの摂取後、酸によってエナメル質が軟化・ 脱灰(溶けかかる)状態になっているときに、ポピドンヨードなどのうがい薬を使うと、より影響を受けやすくなる可能性があります。


2-2 粘膜のバリア機能を弱めるリスク

うがい薬に含まれる強い殺菌成分は、喉や⼝の粘膜に必要な常在菌まで洗い流してしまうことがあります。常在菌は健康な⼈の⽪膚や⼝腔、消化管、⿐などに普通に存在する微⽣物で、病気を起こさずにむしろ体を守ってくれている存在です。外部からの病原体の侵⼊を防ぐバリアのような存在ですが、これを除去してしまうことで、むしろ感染リスクを⾼めることにつながります。


2-3 ⻑期使⽤による副作⽤

ポビドンヨードやクロルヘキシジンなどの成分を使⽤したうがいは、使⽤頻度や体質によっては⼝の中の粘膜に刺激を与え、⼝腔内の荒れ、味覚障害、アレルギー反応などを引き起こす可能性もあります。特にお⼦さんや⾼齢者には、 慎重な使⽤が求められます。

2-4 実は⾵邪予防に効果的とは限らない

ここで⾮常に興味深い京都⼤学健康科学センターの研究結果を紹介させていただきます。

〜うがいをする際に「⽔うがい」した場合、⾵邪の罹患率は 40%低下する。 ⼀⽅で『うがい薬』でうがいをした場合、⾵邪の罹患率は下がらない〜

このように、薬剤に頼るよりもこまめな⽔うがいの⽅が効果的であるという研究結果が出ているのです。その他、流⽔で⼿を洗うことも高い確率で⾵邪予防に繋がります。

3 うがい薬の代替案

では、うがい薬を使わずにどのように喉のケアや⾵邪予防をすればよいのでしょうか。それには以下のような代替策がありますので参考にしてみてください。


3-1 ⽔またはぬるま湯でのうがい

最も簡単かつ安全な⽅法です。⽔でうがいをするだけでも、⼝腔内のウイルスや細菌、ホコリなどの異物を物理的に洗い流すことができます。特に外出後や⾷事前など、こまめに⾏うことが⼤切です。

3-2 ⽣活習慣管理

⽣活習慣を整える(良質な睡眠、⼝腔ケア、禁煙、暴飲暴⾷を防ぐ、アルコールを控えるなど)ことは基本的な事ではありますが、⾵邪の予防には⾮常に⼤切です。うがいや⼿洗いは外部からの細菌やウイルスをブロックする⼀つの⼿段とはなりますが、内側から⾃らの免疫⼒を上げるためにはこれらの⽣活習慣を管理することが必須となります。

また、肥満傾向にある⽅は体内の脂肪細胞が慢性的な炎症状態を引き起こし、ウイルスに対する反応が弱くなり、⾵邪をひきやすくなるだけではなく、回復までも遅くなります。
肥満傾向にある⽅は減量を⼼がけていただき、必要に応じて医療の⼒を⽤いて 無理なく体重を減らしていくのが良いでしょう。当クリニックグループでもオゼンピックやマンジャロを使⽤した GLP-1 ダイエットを提供していますので、参考になさってください。

3-3 ⼿洗い・マスク・湿度管理

⾵邪予防の基本は、うがいよりも⼿洗いにあります。⼿についたウイルスが粘膜に接触することで感染が起こるため、外から帰った後や⾷事の前には、必ず ⽯けんを使って⼿を洗いましょう。また、乾燥した空気は喉の粘膜を弱らせるため、加湿器を使って室内の湿度を保つことも有効です。

4 終わりに

うがい薬は、特定の⽬的や状況では確かに有効な医薬品ですが、誤った使い⽅や過度な使⽤は、かえって健康を損ねるリスクも含んでいます。⾵邪予防や喉 のケアは、薬剤に頼らずとも、⽔でのうがいや⼿洗いといった基本的な⽣活習慣を⾒直すことで⼗分に実現可能です。

近年、エクソソーム(幹細胞培養上清液)療法が注目されています。

点滴や点鼻などで体内にエクソソームを取り入れることで、自らの免疫力が向上して風邪をひきにくくなったり、生活習慣病を予防できたりする可能性が示唆されています。今後さらに研究が進めば、エクソソームが免疫や健康管理に活用される時代が訪れるかもしれません。

私たちの体には本来、病原体から守るための⾃然な仕組みが備わっています。 その働きを⽀えるような、無理のない⾃然なケアを⼼がけることが、結果として最も効果的な予防策となるでしょう。

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