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【泌尿器科医解説】前立腺がんは3人に1人が気づかない!PSA検査の真実

[2026.08.21]

前立腺がんは、自覚症状がほとんどないまま進行するがんです。だからこそ、症状が出る前の「PSA検査」による早期発見が重要になります。今回は、新橋消化器内科・泌尿器科クリニックの泌尿器科専門医が、前立腺がんとPSA検査について皆様にわかりやすく解説します。

 

 

前立腺がんは自覚症状がほとんどない

前立腺がんは初期にはほとんど自覚症状が出ません。亡くなった方を解剖して調べると、実に3人に1人に前立腺がんが見つかるというデータがあり、多くの方が気づかないまま一生を終えています。日本人男性がかかるがんの中では患者数が最も多く、生涯で13人に1人が診断を受けるとされる、決して珍しくない病気です。

症状が出にくい理由は、前立腺の構造にあります。前立腺は尿の通り道に接する「内腺」と、接していない「外腺」に分かれており、前立腺がんの多くは外腺から発生します。そのため大きくなっても排尿への影響が出にくく、自覚症状として現れにくいのです。もし症状が出るとすれば腰痛で、これは前立腺がんが骨に転移した場合に起こりますが、その時点ですでにステージ4まで進行していることがほとんどです。

なお、前立腺がんは進行が比較的ゆっくりで、患者数では1位でも、がんによる死亡数では6位にとどまります。
つまり、早期発見によって選べる選択肢が大きく広がる病気だといえるわけです。

PSA検査は血液検査だけで受けられる手軽な検査

PSA検査は、採血だけで受けられる手軽な検査です。PSA(前立腺特異抗原)は前立腺の組織にしか存在しないタンパク質で、前立腺がんになるとがん細胞が血管を巻き込みながら増殖するため、血液中に漏れ出します。
この数値を測るのがPSA検査で、基準値は一般的に4以下とされています。健康診断の項目には基本的に含まれておらず、人間ドックのオプションや泌尿器科の受診時に測定されることが多い検査です。

【PSAの真実その1】PSAが高い=癌ではない

PSA値が高くても、実際に癌である確率はそれほど高くありません。PSA値4〜10の範囲で引っかかった場合、がんが見つかるのはおよそ4人に1人程度で、残りの多くは前立腺肥大症前立腺炎など、癌以外の原因で数値が上昇しています。50歳以上の男性のほとんどが前立腺肥大を持っているといわれるほど、これは珍しいことではありません。長時間の自転車運転など、前立腺への物理的な刺激でも数値が上がることがあります。

そのため、PSAが高いと言われてもすぐに悲観する必要はありません。まずは超音波検査(エコー)で前立腺の大きさを調べたり、尿検査やCT検査を行ったりして総合的に判断します。癌であれば数値は下がりませんが、炎症などが原因であれば3ヶ月後の再検査で数値が落ち着くことも少なくありません。より詳しく調べる場合はMRI検査を行い、疑わしい部分があれば針生検で組織を採取します。麻酔を行うため、検査中の痛みを感じることはほとんどありません。

【PSAの真実その2】PSA検査は不要ではない

PSA検査は過剰診断につながるため不要」という意見もありますが、不要ではありません。日本泌尿器科学会は現在もPSA検査を推奨しています。理由は明確で、検査によって早期に発見され、命が救われるケースが実際にあるからです。

また、前立腺がんと診断されても、悪性度が低いものであれば「監視療法」という選択肢があります。これは治療を行わず、定期的にPSA値を測定しながら経過を見守る方法です。前立腺がんは細胞の見た目(顔つき)によって悪性度が評価され、悪性度が低いと判断されれば、進行の心配なく生活しながら様子を見ることができます。癌が進行している場合は、手術・放射線治療・ホルモン療法・抗がん剤治療などから、年齢や体の状態、癌の悪性度に応じて最適な治療法が選択されます。

PSA検査は45〜50歳を目安に受けましょう

PSA検査は、家族に前立腺がん既往がある方は45歳以上から、それ以外の方は50歳以上から、年1回程度受けることをおすすめします。

新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは、PSA検査による前立腺がんのスクリーニングを行っております。排尿の勢いが弱い、頻尿、残尿感などの症状がある方はもちろん、症状がない方も、ご自身の値を一度確認しておくことをおすすめします。

 

Q&A

Q1. PSA検査は一般的な健康診断に含まれていますか?

基本的には含まれていませんが、オプション項目として選択できるケースが多いです。

 
 
Q2.PSAが高いと言われました。癌を疑うべきですか?

PSAが4〜10の範囲では、実際に癌が見つかる方は4人に1人程度です。前立腺肥大や炎症でも数値は上昇するため、まずは追加検査や再検査で経過を確認します。

 

Q3. 前立腺がんと診断されたら、必ず手術になりますか?

必ずしもそうではありません。悪性度が低い癌であれば、治療をせずに定期的にPSA値を測定しながら様子を見る「監視療法」という選択肢もあります。

 

Q4. 前立腺生検(組織採取の検査)は痛いですか?

麻酔を行うため、検査中の痛みはほとんどありません。処置後の傷の治りも早く、体への負担は心配されているほど大きくありません。

 

Q5. 何歳からPSA検査を受ければよいですか?

ご家族に前立腺がんの方がいる場合は45歳以上から、それ以外の方は50歳以上からの受診が目安です。年に1回程度の検査をおすすめします。

 

Q6. 前立腺がんの手術には副作用がありますか?

主な副作用として尿漏れがあります。ロボット支援手術の普及により出血量や合併症は大きく減少していますが、尿漏れについては現在もゼロではありません。骨盤底筋を鍛えるトレーニングなどにより、多くの方は日常生活に支障がない程度まで回復します。

 

Q7. 監視療法を選んだ後、がんが進行したらどうなりますか

定期的なPSA検査で数値の上昇が確認された場合は、その時点で手術や放射線治療など積極的な治療に切り替えることができます。監視療法は経過を見守りながら、必要になった時点で適切な治療へ移行できる方法です。

 

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
Yahoo!ニュース エキスパートとして情報発信
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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