糖尿病の原因・検査・食事・治療について
近年、日本の食生活は大きく変化しました。
コンビニエンスストアやデリバリーなどの普及によって、食べたいものを何時でも手軽に食べることができるようになりました。
一見、贅沢にも見える日本の食文化は、過食、偏食、栄養バランスの崩壊を招き、私たちの健康を脅かす原因にもなります。
そういった状況を裏付けるように、糖尿病の患者様の数は増加の傾向にあり、糖尿病とその予備軍の合計は2000万人との報告もあります。
しかし、糖尿病の初期では無症状なケースが多く、また、何らかの症状があつても他の疾患とも共通するものがあり、糖尿病の兆候であることに気づきにくい傾向にあります。
糖尿病が無症状の間に進行すると、さまざまな合併症などを招く可能性があります。
糖尿病のリスクを最小限にするためには、糖尿病について理解し、定期的な健康診断や人間ドックを受け、予防や早期の治療を行うことが重要です。
今回の記事では糖尿病について詳しくお話しますので、参考にしていただければ幸いです。
1.糖尿病とは
糖尿病とは血液中のブドウ糖の濃度=血糖値が高くなる病気です。糖尿病は全身の血管を傷つけ、様々な合併症を引き起こし、命を脅かす可能性のある怖い病気です。
まず最初に糖尿病を理解していただく上で重要な『血糖』と『インスリン』についてわかりやすくお話ししていきます。
1.1血糖とは
血糖とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)のことを指します。
ブドウ糖は私たちの体にとって主要なエネルギー源であり、細胞の生存と機能を維持するために必要な栄養素の一つです。
食事を摂ると、炭水化物は消化されブドウ糖に分解され、体内に取り込まれた後に血液中に放出されます。
正常な健康状態では、食事の後や空腹時に応じて血糖値は変動します。健康な体では、適切な範囲内で血糖がコントロールされ、エネルギー供給が安定し、細胞の機能が維持され ています。
糖尿病になると、血糖の調節が正常に行われず、血糖値が通常よりも高い状態が続きます。
血糖の調節に深く関わるのは、膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンです。
1.2インスリンとは
インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンの一種であり、体内の血糖(ブドウ糖)を調節する重要な役割を果たしています。
①血糖降下作用
インスリンは炭水化物から消化分解されたブドウ糖を細胞に取り込ませる働きを持ちます。
これによって、血糖値が上昇するのを抑制し、正常範囲に保つ効果があります。
②グリコーゲン合成と蓄積
インスリンは肝臓や筋肉などの組織内でブドウ糖(グルコース)をグリコーゲンに変換して蓄える作用を促進します。
これによって、一時的に余分なブドウ糖が取り込まれ、エネルギーとして利用されるほか、将来のエネルギー需要に備えて貯蔵されます。
③脂肪蓄積
インスリンは肝臓で蓄積されず余ったブドウ糖を中性脂肪として脂肪細胞の中へ取り込む働きがあります。
インスリンは血糖値の調節だけでなく、エネルギー代謝全般に関わる重要なホルモンです。
糖尿病になると、インスリンの分泌が不足、または、インスリンは十分に分泌されているにもかかわらず効果を発揮できない状態になってしまいます。
2.糖尿病の分類と症状
2.1 1型糖尿病
①原因
1型糖尿病は、自己免疫疾患によって膵臓の細胞が破壊され、インスリンの産生がほとんど、または完全に停止することで起きる糖尿病です。
これにより、体内での血糖の調節が困難になるため、注射をしてインスリンを補充する必要があります。
②症状
1型糖尿病の多くは、小児の時に発症しますが、その根本的な原因ははっきり分かっていません。
1型糖尿病は遺伝することはなく、生活習慣などの影響もないと考えられています。
その症状は、食欲増進、多飲・多尿、体重減少などとなっています。
2.2 2型糖尿病
①原因
2型糖尿病は、膵臓の働きが低下してインスリンの分泌量が不十分となってしまうか、インスリンが分泌されても、その働きが低下していることが原因で起こる糖尿病です。
一般的に"糖尿病"と表現した場合、1型糖尿病を指すことが多く、原因として生活習慣の乱れなどが大きく影響します。
②症状
II型糖尿病の症状は、食欲増進、多飲・多尿、体重減少、眼のかすみ、手足のしびれ、肌の乾燥、全身倦怠感などが現れます。
2.3糖尿病の合併症
糖尿病を放置し、高血糖が続くと、細い血管や神経に障害が生じて合併症を起こします。
その中でも代表的な「三大合併症」についてお話します。
①糖尿病性網膜症
糖尿病によって、網膜に栄養を送る細い血管が障害を起こし、血液の流れが悪くなったり、詰まつてしまったりすることで網膜症を起こします。
網膜症になると目がかすんだり、まぶしく感じられるようになったり、さらに進行すると失明する恐れもあります。
糖尿病性網膜症で失明に至るケースもありますので、糖尿病の治療とともに、定期的に眼科を受診し、目の検査を受けることが大切です。
②糖尿病性神経障害
糖尿病によって末梢の細い血管に障害が生じると、血流によって神経に栄養を運ぷことができなくなり神経障害が起きます。
特に手足の末梢神経はダメージを受け易い傾向にあり、特に足先から症状が出ることがあります。
足先のしびれや不快感、冷感、熱感、硬いものを踏んでいるような感じなどの症状を感じたら、糖尿病性神経障害の可能性があります。
③糖尿病性腎症
糖尿病が進行するに伴い、腎臓の機能が低下していきます。
腎臓の糸球体の毛細血管には「ろ過作用」があり、体内の老廃物をろ過し、排泄しています。
糸球体の毛細血管が障害を受けると、ろ過作用が低下し、身体に老廃物が溜まってしまい腎不全や尿毒症を引き起こし、命を脅かす事になつてしまいます。
糖尿病性腎症が進んだ場合、人工透析が必要になります。
3.糖尿病の検査と診断
糖尿病は、突然、血糖値が高くなるわけではなく、さまざまな原因によって、少しずつ血糖値が高くなり、正常型→境界型→糖尿病型と進んでいきます。
糖尿病を診断するためには、下記のような検査を組み合わせて行います。
3.1血糖値
①随時血糖検査
食事とは無関係に血糖値を測定します。随時血糖値が200mg/dl以上ある場合は糖尿病を疑います。
②空腹時血糖検査
検査当日の朝食を抜いた空腹の状態で血糖値を測定します。空腹時血糖値がl26mg/dl以上ある場合は、糖尿病を疑います。
③75g0GTT (75g経ロブドウ糖負荷試験)
検査当日の朝まで10時間以上絶食し、空腹の状態で開始し、ブドウ糖液(ブドウ糖75gを水に溶かしたもの)を飲み、30分後、1時間後、2時間後に血糖値とインスリンの値を測定します。(当院では行っておりません)
3.2尿糖
尿中の糖(尿糖)を検査します。糖尿病を見つけ出すスクリーニングに使われます。
3.3HbAlc
血液中の赤血球成分であるヘモグロビンにブドウ糖が結合したもので、 HbAlc は l~2 か月の血糖の平均レベルを反映した数値であり、検査前の食事や検査当日の運動など、短期間の変動には大きな影響を受けないことが特徴です。
HbAlcが6.5%以上の場合、糖尿病の可能性が高くなり ます。
4.糖尿病の治療
糖尿病の治療は、血糖値のコントロールが基本となります。
食事療法、運動療法を行い、症状に応じて薬物療法を検討していきます。
4. l食事療法
糖尿病の食事療法は、1日の適正な摂取カロリーを把握し、摂取カロリーの40~60%を炭水化物、たんばく質は20%まで、脂質は25%以下として、食物繊維が多い食事を心がけることが理想です。
血糖値の急激な上昇を防ぐために、食事の際は食物繊維の豊富な野菜から摂取することが望ましいと言われています。
食物繊維が糖質や脂質の吸収を抑え、腸内細菌にも作用するため、糖尿病や肥満の改善に効果が期待できます。
4.2運動療法
糖尿病の運動療法は、過剰になったブドウ糖の消費が促進され、血糖値が低下し、さらに運動を続けると、インスリンの働きが改善される効果が期待できます。
運動の強度が増すほどにブドウ糖の消費が促されますが、運動を習慣にできる無理のない範囲で行うことが望ましいでしよう。
ウォーキングでは、1日2回、1回につき15~30分程度で合計1万歩を目安に、少なくとも週に3日以上行うことが推奨されます。
4.3薬物療法
1型糖尿病の場合は、インスリン療法が必須となります。
2型糖尿病では、食事療法と運動療法で十分な効果が得られない場合に、症状に適した薬物療法を行います。
糖尿病治療薬は下記のように様々なタイプがあります。
①インスリンの分泌を増やす薬
- DPP-4阻害薬
- GLP-1受容体作動薬
- スルホニル尿素薬
- 速攻型インスリン分泌促進薬
②インスリンの作用を改善する薬
- ピグアナイド薬
- チアソリジン薬
③糖の吸収と排泄を調節する薬
- aグルコシダーゼ阻害薬
- SGLT2阻害薬
5.診療費用
当院は全て保険診療です。初診の診療費用は薬代を除き、おおよそ下記のようになります。(3割負担の場合)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
CT検査 | 5000円前後 |
尿流量動態検査 | 1500円 |
膀胱鏡検査 | 3000円 |
胃カメラ | 4000円前後 |
大腸カメラ | 5000円前後 |
※3割負担の場合
当院では、患者様全員を番号でお呼びし、仕切りを設けた待合室でプライバシーに配慮した診療を行っております。
健診で血糖値が高いと指摘された、糖尿病が気になる、という方は新橋消化器内科・泌尿器科クリニックにこ相談ください。
日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。