淋病・淋菌感染について(原因、感染経路、検査、治療法)
淋菌感染症は淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる感染症です。
淋菌感染症は性器クラミジア感染症と並び、患者数の多い性感染症となっています。
1回の性⾏為で感染する確率は 30%程度と⾼く、感染すると強い痛みを伴う症状が出たり、男性⼥性ともに不妊の原因となったり、重症化すると菌が全⾝に広がってしまう場合もあり、注意が必要です。
今回は近年急増した性感染症のうちの⼀つである淋菌感染症にスポットを当ててお話しさせていただきます。
1 淋菌の感染経路
淋菌は⾼温にも低温にも弱いため、普通の環境では⽣きることができません。
そのため性⾏為によって粘膜を介して⼈から⼈へと感染し、広がっていきます。
性⾏為によって感染するため、咽頭、尿道、膣、肛⾨に感染する恐れがあります。
稀なケースですが、感染している部位を触った⼿で⽬を擦ると⽬にも感染する可能性があります。
また、妊娠中の⼥性が淋菌に感染している場合、産道感染による⺟⼦感染の恐れもあります。
⾚ちゃんに感染すると淋菌性の結膜炎を起こし、最悪の場合には失明する原因にもなってしまいます。
2 淋菌の症状
淋菌に感染した場合、下記のような症状が⾒られます。
男性 | ⼥性 |
---|---|
尿道からの膿 | おりものの増加 |
強い排尿時痛 | 性交時の出⾎ |
尿⽩⾎球の出現 | 下腹部痛 |
のどの違和感 | のどの違和感 |
淋菌に感染していても⼥性は症状に乏しく、⼥性の淋菌感染者の約 40%は⾃覚症状を伴いません。
そのため、無症状のまま淋菌に感染している⼥性から男性へ感染してしまうことが多いとされています。
⼀⽅で男性が感染すると、うずくような排尿時の痛みや尿道からの膿(多量、⻩⽩⾊)を認め、その痛みは⼈によっては歩けないほどです。
男性は強い⾃覚症状があるため受診に繋がっていたのですが、近年では男性でも症状に乏しいケースも出てきており、受診機会がなくなってしまうことによる感染拡⼤が懸念されています。
また、淋菌性の尿道炎や⼦宮頸管炎の患者様の 10〜30%で咽頭への同時感染が認められるにも関わらず、それが無症状であるというデータもあります。
そのため、ターゲットを尿道や⼦宮頸管に絞った薬を使⽤しても、咽頭の淋菌が残存してしまうというケースもあるのです。
3 淋菌の潜伏期間
淋菌の潜伏期間は 2〜9 ⽇です。
感染してもすぐには症状が出ませんので、この期間に性⾏為をするとパートナーに感染させてしまう恐れがありますので注意が必要です。
4 淋菌の検査
淋菌の検査は検鏡法、培養法、PCR 法などがありますが、当院では検出感度が⾼い PCR 法を取り⼊れています。
男性の場合は尿から、⼥性の場合は膣からの拭い検査となります。
結果は2〜3 ⽇後にお伝えできます。
5 淋菌の治療
淋菌の治療は抗⽣物質のセフトリアキソンまたはスペクチノマイシン(トロビシン)です。セフトリアキソンは点滴で 1 回のみ、スペクチノマイシンは臀部への筋⾁注射で 1 回のみの治療で終了し、淋菌性の尿道炎に対しては、ほぼ 100%の治療効果が得られます。
スペクチノマイシンは咽頭への移⾏が悪いため、咽頭の感染が疑われる場合にはセフトリアキソンが選択されます。
6 陰性確認
先述したように、セフトリアキソンやスペクチノマイシンを使⽤した場合、淋菌性尿道炎に対してはほぼ 100%の治療効果がありますが、セフトリアキソンやスペクチノマイシンにアレルギーがあり、他の薬を使⽤した場合には治療が失敗する可能性もあるので、治癒確認が必要となります。
治療により淋菌が検出されなくなったか確認するためには、治療後 2 週間経過した後に再検査をするのが確実です。
7 治療しないまま放置すると
7-1 男性の場合
治療しないまま経過すると、尿道の淋菌が「上⾏感染」を起こし、尿路を遡って精管、精巣上体まで到達し、精巣上体炎を引き起こしてしまいます。
淋菌による精巣上体炎を起こすと精⼦の運動能⼒や数に影響を及ぼし、男性不妊の⼀因となってしまいます。
7-2 ⼥性の場合
治療しないまま経過すると、膣の淋菌が「上⾏感染」を起こし、⼦宮頸管炎から卵管炎を起こし、卵管が詰まってしまうことにより、⼦宮外妊娠や不妊症の原因となる場合があります。
8 クラミジアとの同時感染
淋菌に感染している場合、クラミジアにも同時に感染している確率が 20〜30%あると⾔われています。
そのため淋菌を疑う症状のある場合にはクラミジアも同時に検査し、必要に応じて治療することが必要となります。
9 パートナーの治療
男性が淋菌に感染した場合には排尿時痛や尿道からの膿などの強い症状が出るため、医療機関への受診機会がありますが、⼥性が感染しても症状が軽かったり、無症状の場合もあったりするため、受診に⾄るケースが少なくなっています。
淋菌感染が判明した場合には、パートナーも⼀緒に治療することが⼤切です。
淋菌に限らず性病はパートナーの理解と積極的な治療への参加が必要となります。
10 淋菌の予防
淋菌の予防は不特定の相⼿との性⾏為を避ける事、コンドームを正しく使⽤することです。
咽頭に感染することもあるため、オーラルセックスの際もコンドームを使⽤することが⼤切となります。
また、性⾏為のあとはシャワーで綺麗に洗い流したり、うがいをしたり、尿をして菌を洗い流したりすることも予防に繋がります。
11 まとめ
近年性病にかかる⽅の数も増えています。
原因は SNS の普及、コロナ患者様の治療が優先されたことにより性病を疑う⽅の受診機会が減ったことなど様々なことが複合的に絡み合っていると考えられます。
性病は⼈ごとではなく、誰でも感染する可能性があるということを認識することが何より⼤切です。
また、疑わしい相⼿との性⾏為をしてしまったり、性病を疑う症状があったりする場合には、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
新橋消化器内科・泌尿器科クリニックでは淋菌を疑う症状のある⽅の検査、診断、治療が可能です。
パートナーとお 2 ⼈で受診していただいても結構です。
ご質問やご不安な事など、どんなことでもお気軽に当院にご相談ください。
12診療費用
(※3割負担の場合)
クラミジア淋菌の検査・治療費用 | 3000円~4000円 | |
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梅毒の検査・治療費用 | 3000円~4000円 | |
尖圭コンジローマの検査・治療費用 | 薬治療 | 1000円~2000円 |
電気メスによる切除 | 4000円~6000円 | |
トリコモナスの検査治療費用 | 3000円~4000円 | |
マイコプラズマ・ウレアプラズマの検査費用 自費検査 | 9000円 | |
HIV感染症の検査費用 自費検査 |
4400円 | |
性器ヘルペスの検査・治療費用 | 3000~5000円 | |
淋病の検査・治療費用 | 3000~4000円 |
日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。